第50回記念二元展より

会長

嶋津 俊則

 

 第50回記念二元展より、嶋津俊則会長の作品「バスゴーの城跡と僧院」を紹介させていただく。
 ここ数年描き続けてきた巡礼道シリーズも、昨年キリスト教の三大巡礼地のひとつ「サンチァゴ・デ・コンポステーラ」のカテドラル内部の聖人とレリーフを対比させて描き一応のピリオドを打ったが、嶋津氏の描いてきた巡礼道や、それ以前のヨーロッパの石造りの教会や城壁の街のコンセプトは、今なお現存する石造りの構築物や街並みが紡ぎ残してきた歴史の重みを画面に描き残すことであった。だから、石造りの街の作品には殆ど人物が登場しない。そしてこれらの作品群は、総じてモノトーン色で重く統一されており、実際のデッサン時に見る色彩を超えて氏の感受した想いの色彩として描出されている。
 さて、そうした流れで今作「バスゴーの城跡と僧院」を拝見すると、氏の作画基調に一切のぶれはない。街の歴史と街並みは立地風土と宗教色に染まるのは世界共通のことだろう。どういった経緯で氏がインドのラダック地方の取材を決めたのか想像の域を出ないが、この地はチベットとの国境の街で、チベット文化がしみ込んでおり、チベット仏教修業の聖地としての多くの僧院が林立する。正に歴史的な空間を感じたからではあるまいか。チベットへ直接入っての取材は中国問題もからみ行きづらい。来年再取材をすでに計画されていることから、余程の共感を得たに相違あるまい。
標高3千メートルを超える剣呑な岩山に根付くように建てられた僧院と岩と一体化したような城跡、遠望するヒマラヤ連峰の高山の積雪が真っ青な空に陽をあびて輝いている。こんな別世界が11世紀ころから千年の歴史を刻んでこの地に在り続けている。人間なんてちっぽけなものよと、思わず口をついて出てきそうである。圧倒される景観に氏は何を注視したのか、それは生活環境厳しい高山盆地(麓の街)、それ以上の崖上の環境。その両者を険しい崖道が繋ぐ。とげとげしい起伏を的確な描写が捉えている。(松)   


 

バスゴーの城跡と僧院