伊藤弘之展

― 旅から ―

伊藤 弘之

■4月14日〜19日 ■GALLERY 雛


 2000年のベネツィアの取材から始まったヨーロッパのシリーズは10年という熟成の歳月で新たな展開へと進みつつある。氏の作品の重要なモチーフのひとつである木馬は、馬の形態を持った仮面と言えるのではないだろうか。アンソールの描く仮面のように、そのきらびやかな殻の内側の闇にエレジーを塗込めているように思えてならない。氏にとって、仮面は木馬であり、木馬こそが人そのものである。「カーニバル前日」という作品がある。累々と積み上げられた仮装の街、仮面をかぶった女性の目は描かれていない、だがそこには深い闇に潜んで凝視する眼がある。観者はその闇の目に魅かれ立ち尽くす。
 氏は今後の作画について「ベネツィアの仮面はまだ掘り下げるべきものがある」と語る。その後に、今迄胸の奥にしまい込んでいた新しいテーマをじっくり時間をかけて描いていくのだとも。5年〜10年のスタンスで描こうとしているのは、地元・神戸。木馬たちが港の街を飛翔する。独立美術協会会員。(獏)

 

遺産 I 147X112  油彩・キャンバス