伊藤弘之傘寿展


● 5月16日(火)〜21日(日)
● 兵庫県立美術館王子分館

原田の森ギャラリー本館1F


 「カルーセル」の循環と人の輪廻の同一性を根幹とした絵画観から発し、時間性と想像力を加味した時空を闊歩する木馬(カルーセルから抜け出した木馬=伊藤氏自身)シリーズで独自の世界を創出した独立美術協会会員の伊藤弘之氏が、5月16日から改修なった兵庫県立美術館王子分館・原田の森ギャラリーの1階中展示室で傘寿展を開催する。
 これまで、2004年の画業40年展(西宮市立市民ギャラリー)、2008年の大阪芸術大学短期大学部退官記念展(尼信博物館)、2011年の自選展( 兵庫県立美術館ギャラリー棟3Fギャラリー)と3回、節目にあたる年に回顧展的な大個展を開催してきているが、この度は傘寿を期して改めて自身の画業の歩みを振り返り、作品とエッセイ集をあわせた4冊目の作品集を上梓し、伊藤弘之の全貌を顕現させる計画を進めていると聞く。 
 出品作もほぼ選定が終わり、50号=4点、100号=16点、130号=1点、150号=11点、200号=12点の大作(予備4点含む)のみの41〜45点が展示予定で、1965年〜2016年の思い入れのある作品が並ぶ。見応えある展観内容となるのは必至であろう。
 伊藤弘之氏は1937年、横浜の生まれ。1956年に京都市立美術大学に入学し、須田国太郎、黒田重太郎、今井憲一に師事し、在学中の第26回独立展に初出品を果たしている。卒業制作展の「謝肉祭A・B」が受賞する等、若くして画家への期待感を呈し、その後フォーブ、半抽象と作風を探りながらもその期待に違わない活動を続け、1966年の関西独立賞を皮切りに「藤岡賞」「野口賞」「安田火災美術財団奨励賞」など受賞を重ねて1985年に安井賞展にも出品、同年にMOA美術館奨励賞を受賞している。氏の作品に初めてカルーセルが登場するのは1966年の第1回個展の「メリーゴーランド(1963年制作)」である。具象対象としての作品であったが、それが1970年中頃以降サーカスと馬、カルーセルを組み合わせた構成に進化して、更に、木馬を分離浮遊させ自己の眼とすることで幻想性、神秘性を孕んだ作品へと徐々に昇華していくのである。そして1992年「覬(ぎ)」で独立賞受賞、翌年も「綯(とう)」「朧(ろう)」で独立賞を連続受賞し、1994年に晴れて会員に就任した。
 以降もこのシリーズは北海道、鳴門、グランドキャニオン、ヴェニス等、大自然や都市、日本の情景との融合をなし歴史や自然賛歌で展開をみせる。そしてそこには作家の深意が込められている。掲載の「逾(ゆ)」は、時空を超えて飛躍する作家自身の回想と夢が交錯する。巧みな構成に、深い色彩の調和がある。 (松原)

 

 

逾(ゆ) 200F〈第70回独立展 2002年〉