山口貞次個展  

 毎年、上野の都美術館で開催されるモダンアート協会展で興味をもって拝見する作品がある。「ハンバーガー・エレジー」である。作家は山口貞次氏。このシリーズで超リアルにファーストフードを描き続けているが、何故かその一部が黒い背景の闇に溶け出している。「エレジー」の語意から、悲哀・哀愁のイメージを考え合わせれば、食に対する精神性の貧困をユニークにもじっているのではないか、と思っていた。正にユーモアと切なさが妙なリアリティーの中に同居しているのである。それにしてもアルミフォイル、紙、パン等の質感描写 は群を抜く。実在感がある分、溶け出した虚無感に不可思議な思いが残るのである。

 今回の個展で、「私は一度もハンバーグを食べたことがない」とお聞きした。これは、食事はこんなものではない、団欒のなかにある、といったメッセージと私は受け取った。食というのは他の命を自分に取り込む業をもっている。ならば、自然に謙虚でありたい。というのが氏の本心ではあるまいか。

 1935年、長崎生れ。東京芸大卒後、新制作展に14回、その後モダンアートで活躍している実力派。           (松)

-自然賛歌への想い-

■10月20日〜25日   ■櫟画廊(中央区銀座)


シリーズ      「ハンバーガー・エレジー」