アニミズムの幻想を追い求めて50余年
第5回 加 藤 三 男 油絵展

 「人々は、ごく普通の生活の中でもふと、何かの事物と直面した時驚きの中に別な世界の幻想を創りだすことがあります。生きていることは日常当然の様ですが、注意深く身近に目を向けると、星や月だけでなく、ごく小さな世界にも驚くような幻想が生まれることに気がつくのです。」との加藤三男氏の〈夢想する時〉と題した一片の詩がある。
 万物に靈が宿るというアニミズムの思想は、宗教的、習俗的なものとして古代から受け継がれてきており、ギリシャや日本の神話などにも色濃く残っている。そうした神話から夢想した世界が、これまで50余年追い求めてきた加藤氏のアニミズムの幻想空間である。
 今回は「アテナの使者」、「ホメロスの器」、「ブラクシラの器」、「クエンカ幻想」など主にギリシャ神話にテーマを求めた作品で構成されたが、それと平行して自身の内面を問い続けてきた自画像「セニョール」シリーズの最新の大作「比較とセニョール」も迫力あった。ハウズナーのオマージュ的な香りがあるが、「比較」とは現実の自分に対する自我の内面意識、コンパスの針が微妙に揺れる。今回新たに加えられた「水牛の角」も意味深である。また、「もどかしきもの」は、55歳の時、坂崎乙郎氏に勧められ4年間のマドリード大学留学当時の現地制作(現地コンクールで受賞)であり、十字架を背負うキリストを組み合わせた手で暗示させている。    (松)

  ■平成19年12月19日〜25日  ■上野松坂屋 南館5階 美術画廊



     「もどかしきもの」
 (60F)