幻想の世界を求めて

第6回 加 藤 三 男 油絵展

 

■ 平成21年12月23日〜31日
■ 上野松坂屋 南館5階 美術画廊

 

 

 「思う存分残りの人生を絵に打ち込みたい」と、76歳でモダンアートを離脱、あれから5年、その間銀座での個展1回、隔年開催の上野松坂屋での個展も3回目を迎えた。
 これまで45年間にわたり自画像を描き続けてきた加藤氏だが、自然、社会における有りようを常に自分自身の問題として考えるようになったからだと語る。だから氏の作品にはその折々の出来事が暗示されてきた。しかし、今回は日本、日本人という意識の在り方、乱れた世相を正す意図を象徴性ある「くし」に託して構成したという。男と対極にある女=くし、そうした意味も含めこれまでの自分のテーマも見つめ直したいと聞く。55歳にしてスペイン留学を果たし、昨年に現地で作家との交流を深め、今年も再訪するという。ある意味日本人のアイデンティティーの欠如を憂う加藤氏の心の動きともとれる。32点の出品作より3点をピックアップさせて頂いた。
 100号の大作「セニョールと櫛」は、白塗りの男(自画像)と真紅の櫛。そっと差し出された指から伸びる白い糸、平静を装う視線に誘惑と抑制のジレンマを感じる。櫛を女性として観るならば、「幻想風景」は蒼い櫛に絡み合う乳白色の肌を持つ瓶、烏瓜(緑から赤は成熟か)、そして柘榴。それらは女性の本質すべてを現しているように思える。「櫛とフクロウ」で櫛は月として現われる。月の神は女神アルテミス。満ち欠けで三つの顔を持つが三つの烏瓜はその比喩であろうか、狭間の黒い空間に屹立するフクロウ(自身)の視線が浸潤する。     (松)

  



     「セニョールと櫛」
 (100F) 

「櫛とフクロウ 雛」 (20P) 

「幻想風景」 (10F)