第7回 加 藤 三 男 油絵展

幻想の世界を求めて

 

■2011年12月21日〜31日
■松坂屋上野店 南館5階 美術画廊

 

 

 「この度の個展に向けて作品を描いているとき、何か手応えを感じた。ふっと気持ちが前に抜けたようで、これからもっともっと描けそうだ。」と会場に入るやいなやの加藤三男氏の言葉が私の心に響いた。正に驚くべき83歳の人生観・画家魂である。聞いている私の方がタジタジで、逆に勇気を貰っている。
 70歳で決断し、始めた隔年開催の上野の個展も、今回で7回目を迎える。前回から副題として書かれていた「アニミズム」の語句が除かれ、「幻想の世界を求めて」となった。万物に宿る精霊のイメージの具現に制作の意図があるのではなく、自分自身の生き様、哲学を絵画に込めるためにシンボライズされた物そのものを画面に登場させる。何かを語らせるために。
 今回の個展でメインとなった作品3点を挙げた。先ず「セニョールと灯」は、現在の心境の自画像を描く。「一歩先を灯をたよって一歩一歩進むより仕方ない(アンドレジッド)」、「良き共を選び慈しみ理法に逆らわず注意深くサイの角のように一人で歩め(仏陀)」の言葉から、日の丸の赤・白、灯は行灯のイメージを。突き出た指はサイの角。ささやかだが確実な、逼塞社会からのブレイクスルーだ。次の「幻想詩」は極めて暗示的である。貝(上野地下駐車場工事の時、約2万年前の地層から出てきたサザエの先祖と思える化石)を中心に、テロ、悪に係わるエロチシズム、情報の氾濫、そしてその対極にある生命、自然の美への回帰、そして無情を。現代が受けている挑戦であり「アーノルド・J・トインビーへ捧ぐ」作。そして「何を想う」は氏のアニミズムの中での自画像。鋭い視線が虚構を暴く。夢追い人健在なりである。(松)

 

 

セニョールと灯  50号

幻想詩   50号

何を想う   30号