第8回 加 藤 三 男 油絵展

幻想の世界を求めて

 

■10月16日(水)〜22日(火)
■松坂屋上野店 本館7階 美術画廊

 

 恐るべき85歳のパワーである。自分自身の絵画の在り方を求めて、70歳で決断し始めた隔年開催の上野の個展も今回で8回目を迎える。途中、第4回展開催前の2005年10月、長老的存在であったモダンアート協会を「思う存分残りの人生を絵に打ち込みたい」と退会。その後も黙々と制作に取り組み、銀座での自選展をはさみながら宣言通り隔年のリズムを保って一昨年の7回展を開催してきている。
 氏の代表的モティーフであるモダンアート時代からのシリーズ「セニョール」、「M氏の肖像」は常に意識している死生観、自然、社会に対する思いであり、ひいては自分自身への問いかけを自画像の仕草と表情で表現してきた。暗闇からギョロリと睨む視線、憂いを秘めながらも未来を見据える。赤面を突き破る右手は現状打破、ブレイクスルーだ。もう1点は「A.トインビーへの想い」と題された作品で、広大なサバンナの住人ダチョウの頭部のみが描かれている。赤面は灼熱の環境を、周りの青の配色はうつうつとした心をイメージしたものであろう。自然破壊と環境悪化で「共生」の難しさを突いて「未来からの視点」で現況を考察する。実は前回からA.トインビー的思考が加藤氏の制作背景に顕著に入りだしている。アンドレ・ジッドもまた然り、「人にはそれぞれに素晴らしい可能性がある。自分の力と若さを信じることだ。『自分次第でどうにでもなる』と、絶えず唱え続けることを忘れるな。」は加藤氏の座右の言葉だろう。
 この2点を含む氏の幻想世界が楽しみである。また、来年、4月8日からの兵庫県立美術館原田の森ギャラリーでの大個展も。(松)

 

 

セニョール 100F

 

A.トインビーへの想い 30F