―幻想の世界を求めて―

第9回 加藤 三男 油絵展

● 11月25日〜12月1日
● 松坂屋上野店本館7F美術画廊F

 9回目の個展に際して、「今、この美しい自然を所有する地球上の各地で、争いごとが数多くあることはとても悲しいことです。意識のありかたで、寛容さや優しさを忘れず、そして、人々の痛みや、愛することも感じる人間でありたいものです。そんなことを想いながら、身近なものたちを描いています。」との作家加藤三男氏のメッセージが案内状に記されている。その想いが今回の作品を創りだした。
 一昨年の4月、兵庫県立美術館王子分館原田の森ギャラリーで1970年代から今日までの代表的作品約65点で構成された加藤氏の大個展が開催され、85歳を過ぎて尚エネルギッシュな画面と明確な作意を秘めるこれまでの作品創りのあり方に、一般観者から画家、書家を含めた関西の作家にも大きな関心を与えた。この展覧会が契機となり、平成27年度の第66回宮崎県文化賞(芸術部門)を加藤三男氏が受賞。授賞理由は「永年にわたり中央画壇において活躍し、幻想的で迫力のある独自の画風により多くの優れた作品を発表し続け国内外において高い評価を受けるなど、本県文化の向上に寄与した功績」である。
 1928年長崎県佐世保に生まれ、1945年宮崎県都城市に居住。宮崎大学教育学部美術科卒業後、武蔵野美術大学油絵科に入るも中退。モダンアート協会展に出品し協会賞他受賞。坂崎乙郎との知己を得て、その絵画観に共鳴する。安井賞展出品、企画個展を開催する中、坂崎氏の勧めで55歳でスペイン留学を果たし、現地でのコンクールで受賞。76歳でモダンアート退会、以降個展主義を貫いている。セニョールの自画像シリーズとアミニズムの中の梟のこども(自画像)の展開から、よりメッセージ性を強めた「A.J.トインビーへの想い」を前面に押しだしたのは2011年の第7回個展からである。
 冒頭に述べた想いを紹介の作品は語る。上段の白梟はシベリヤ地方に生息し、夜の天空を支配する象徴。下段の白頭鷲はカナダ、アラスカ地方に生息し、昼の天空を支配する象徴。トインビーの著書「現代が受けている挑戦」はいう。科学の進歩による死滅を防ぐ為には、知性、知力、感性の調和による習慣の改造が不可欠と。夜・昼を支配する象徴、オールマイティーのより良い舵取りを願う加藤氏の深意の表現である。(松)

 

 

 

 

 

A.J.トインビーへの想い  2015  50F