加藤 三男 個展II
―幻想の世界―


● 6月13日(火)〜18日(日)
● 兵庫県立美術館王子分館
    原田の森ギャラリー本館1F

 元・モダンアート協会会員の加藤三男氏が、これまで描いた作品(1969年以降)の中から年代を追って自選した大作約60点と近作約20点を並べた回顧展を兵庫県立美術館王子分館・原田の森ギャラリーで開催したのは2014 年の4月、85歳の時である。その作品から放たれる強烈な存在感は、作家の世界に誘うオーラとなって展覧した多くの人達をしばし立ち止まらせた。明快な構成、色彩も魅力の大きな要素だが、何よりも作品にかける作家の深い思いを感じたからに相違ない。
 その大個展を終えた後、今度は壁長250メートルの大展示室での再度挑戦をという加藤氏の情熱に筆者は驚きを禁じ得なかったが、同館の耐震修復工事もあり、新装後の大会場確保も難しく前回と同じだが、新装本館1階での開催と決まった。
 翌年、名誉賞とはずっと無縁と達観していた加藤氏だが、大個展開催と初めての画集発刊が故郷との縁を新たに結び、宮崎県文化賞を受賞、筆者もその喜びを分かち合った。
 3年の月日はアッという間。開催に先立ち加藤氏のアトリエを訪問したのは3月末。50帖はあろうかというその広さに先ず圧倒された。部屋の横側に手作りの位牌がふたつ。ひとつは加藤氏の母、もう一つは評論家・坂崎乙郎氏。毎朝お祀りして制作に入るのだという。「坂崎氏との出会いがあって、今の画家としての私がある。」と言い切る加藤氏。坂崎氏の「絵とは何か」他で語られた作品と作家の関係、作家の矜持、加藤氏は今もなお作家としての生き様を見事に貫いている。
 さて、訪問の主目的は個展のパンフレット作製のための写真撮りであった。が、油彩の作品は、正面イーゼル3台に載っていた100号3点の連作のみ。しかし、強烈な存在感、イヌ鷲のひなと親の眼光の鋭さを借りて、今の社会を見る「A.J. トインビーへの想い〈眼/光〉」である。加藤氏曰く、テーマが絞りきれず、日記代わりにドローイングを毎日のように描いていた。その繰り返しから何かヒントが得られるかと…。
 実は取材時の〈眼/光〉は制作途中であり、後の完成作を上掲した。
 先日、130号2枚の油彩「二人のセニョール」が完成したとの連絡が入った。
 今展の出品作のメインは、イヌ鷲3部作と「二人のセニョール」(自画像)となるが、もちろん個展後の3年間の作品と過去の代表作が加わり、約70点の展覧となる。幾分過去の出品作も重なるが、何といってもこの度20点近くのドローイング作品が並ぶことが面白い。
 指のポーズ38点の〈イメージ「生」3〉は正に日記と言っていいほど、日付が記され、且つ微妙に変化した指の組み方の変化を描いている。1988年、スペイン留学時の現地コンクールでの受賞作、組み合わせた手指で十字架を背負うキリストを暗示させた「もどかしきもの」を彷彿とさせる。また、指のポーズは「手話」に代表されるように意思の表現でもあり、影絵としての表現もある。指に付随する曲線の動線、空間を限定する菱形などその発想が面白い。一方、「生」1、2、4、10は一見機械的だが、昆虫や鳥ほか静物のうごめきが感じられる。幾何学的に繰返された形態のバランスが、生けるものを暗示させる。色ボールペンの色彩も効果的だ。米寿を迎え、月に3、4回卓球の倶楽部に通う加藤氏。この次の個展、渡欧を視野にいれての体力保持の為と聞く。(松)

 

 

イメージ「生」3

イメージ「生」3 部分a

イメージ「生」3 部分b

 

 

 

A.J. トインビーへの想い「眼/ 光」 (100号F×3)

イメージ「生」1

イメージ「生」1 部分a

イメージ「生」1 部分b

イメージ「生」2

イメージ「生」4

イメージ「生」4 部分

イメージ「生」10