第55回 モダンアート展より展

 

加藤 三男

 

 パワフルでド迫力のある面貌は相変らずで、この会場でこの作品に出会わぬと何となく落着きを欠くような、中毒性のアクの強さを持っている。それを〈セニョール・シンドローム〉とひそかに呼んでいる。
 セニョールシリーズは10余年になるが、かつてのコラージュは後退し、近年は背後の黒と青のストライプをはじめ、白塗りの仰角の顔、胸のタスキ?のような柄はほとんど変らない。厚い唇や巨大な鼻のいかつい顔立ちはいつもながら、目深くかむったカラフルな帽子の下からのぞく小さな目の弱々し気で不安を漂えたおびえがいつも気がかりだ。
 黒々とした巨大な手(指)はもう一つのポイントで、今回は白・赤の小さな角錐を持っている。これが題にある比較を意味し象徴するのだろう。
 背に負うものや白い波打つものの正体は不明だが、平成の世になってから登場したセニョールはやはり時代の子であり象徴であることは違いない。
 表層のド迫力の背後にひそむ諸々は解明しきれぬ多くを抱えている。       (中野)

 

 

― 比較とセニョール ―  F200