アニミズムの幻想を追い求めて50余年
第4回 加藤三男 油絵展

 「セニョール」、「M氏の肖像」など、モダンアート展で自画像を描き続けている作家がいる。加藤三男氏である。氏は戦後、従兄弟の言葉に衝撃を受け、「人間とは青春とは、生とは死とは、ということを絶えず自分自身の問題として考えるようになった」と言う。40年間にわたって自画像を描き続けてきたのは自分自身に対する問いかけであり、喜怒哀楽をすべて肯定したなかでの人間の尊厳を忘れてはならないという自戒が込められていたのかもしれない。パワフルで圧倒される画面の奥底に漂う憂鬱、もの悲しさ、慈しみ、これは正に加藤氏そのものであるといえる。
 個展では、幻想的なアニミズムの世界を構築し発表しており、ウイットにとんだ氏の感性が観者を楽しませてくれるが、これも自画像の裏面に漂うそれらと同じ香りがする。何事も徹底的にやる、そして感じる。その感じたことをバネに更に前に進む。古稀にして未だ青年の心を保つ加藤氏だが、55歳でマドリード大学美術科に留学編入し、4年間滞在という経歴をお聞きして納得する。「ある日の幻想」は、その留学時の現地での作品である。シュールな空間にゆかた生地は日本人の意気である。
 この個展を前にして会を退会、次はN.Y.で再挑戦だという。勇気をもらった個展である。        (松)

  ■ 上野松坂屋南館7階 美術画廊  ■ 12月21日〜27日

   「ある日の幻想(訪問者)」 50F