加 藤 三 男 自選展

 昨年12月上野松坂屋での個展に引き続いての発表である。長年モダンアートでユニークな画面いっぱいの顔を「セニョール」、「M氏の肖像」といった画題で出品を続け、今や長老的存在であった訳だが、モダンアートでは会場効果の一つとさえなっていたと思われる。しかし昨年10月、思うところがあって退会、周囲の驚きの中御本人はいたって明快、「思う存分残りの人生を絵に打ち込みたい」と語る。77歳を過ぎてなお昨年N.Y.で再挑戦するとお聞きしたが、テロ問題もありオーストラリア留学を目論んでおられる。55歳にしてマドリード大学に留学編入し、4年間滞在という生き様は今も見事に受け継がれているといえよう。
 さて、今回の個展には再びセニョールシリーズが登場した。これはとりもなおさず自画像であり、常に自分の内面を見つめることで意識の在り方、持ち方を自ら問うという存在認識の究極を求めた一つのアプローチであろう。題名に付けられた「比較」とは内面意識と自分はどうあるべきかという対立をさしているといえる。また、スペイン留学時の作品「風景」が出品されていたが、手を複雑に組んだ構成の裏にキリストが十字架を背負う形状を比喩しており、構成バランスも良く現地での高い評価を受けている。そして氏の幻想的な一面を見せてくれるアニミズムの世界も魅力あり、梟から創出した独特の「鳥」も健在、色香の香る作品も登場する。ギリシャ神話等の文学的要素も巧く自分の絵画世界に結合させている。正に夢追い人である。   (松)

  ■10月11日〜21日 ■GINZAギャラリーアーチストスペース


   会場にて 左/風景(50F)1988年   
        右/比較とセニョール(50F)