第93回白日会展より
副会長 深澤孝哉
―悠久の歴史の香り高く―

 

 イスタンブールはボスポラス海峡に臨み、国際色に富む。かつてコンスタンチノーブルの名で、東ローマ帝国、のちオスマン帝国の首都として栄えた。いまも往時のおもかげを漂わせてエキゾチックな雰囲気をもっている。
 そのイスタンブールが夕照のなかに静かに佇んでいる。丘陵の建物群は豊かなの木立ちに包まれ、丘の上に広がる夕雲はピンクに染まり、帰港する船団は逆光に黒々と七彩の水面を進み行く。この水面の彩りは七彩と言って決して大袈裟ではない。細かな筆致のリズムを奏でながら、水面に詩情を謳っている。きらめく小波はわずかな風を受け、丘陵をわたる爽風をイメージさせる。こんなにもカラフルでありながら、祝祭的なわけでもなく、落ち着いた日常を描いて、時の流れの豊かさを感じさせるのは、長い歴史を閲してきた風土へ向ける、画家の画嚢の豊かさが存分にあるからなのであろう。
◎1937年神奈川県生。‘61年東京藝大油画科卒。´65年渡仏。国立パリ高等美術学校入学、モーリス・ブリアンションに学ぶ。´71年帰国。白日会展に出品。´73年昭和会賞受賞。現在、白日会常任委員・副会長。(中)

 

 

イスタンブール夕景(トルコ) F100