アトリエ訪問

新連載 第21回



アトリエ訪問 新連載 第21回
書家 日比野 博鳳さん
 ―名門 水穂の継承に京の雅を重ね―
訪問者:松原 清


 4月20日の日曜日、京都の日比野博鳳さんの書斎を訪ねた。最近新しく居を構えた下鴨前萩町、京都地下鉄烏丸線の北山駅近くの閑静な住宅街である。目の前に京都府立植物園が広がり、自宅経路に京都コンサートホールが新設されて、京都市民の憩いの場となっているようだ。
 折しも4月15日、令和6年度の日本藝術院賞の発表があり、そのインタビュ―を兼ねての訪問を予めお願いしていたが、玄関にはお祝いの胡蝶蘭が所狭しと置かれていた。書斎はお弟子さんの教場と兼用で約30畳(床仕様)ほどの広さがあり、自身の作品制作の場でもある。

書斎でー五鳳翁の作品と

 博鳳さんの略歴をふくめた記事は全日本美術新聞2002年の自選ギャラリーと2005年の書人探訪21ム出会いの旅/文 田宮文平に掲載。全美20周年に「現代書家の素顔」と「美を継ぐ者たち」という記念本として上梓させていただいている。もう20年以上経ており、その後光鳳先生のご逝去、水穂会を継ぐことで必然となった会の分派と新・水穂会としての新たな指針をお聞きする良い機会となった。
 書斎には、落款が押されていない小作品が書棚に置かれていた。五鳳翁の珠玉の作、寸松庵色紙の香りが漂い目が離せない。田宮さんが存命だったら、今の現状をどう見るのだろうかと思っていると、「水穂会は五鳳先生の書を研究する会なんです。」といきなり本質が語られた。それから、いろいろな話題が飛び出す。オーディオからカメラ、そして今話題のAIの話へと。書は日本人のアイデンティティーであり、AI をとび越えた新しい視点を持つ必要がある。例えば絵画の構図、音楽のリズム、リフレインなどの全体構成も参考にしたい。また、SNSの発展にも言及、「ライターは AIが代用出来るが評論は残る」と大胆な発言も。そして、五鳳先生の背景と自分の背景を見ると自分は父と同じ生粋の京都人で書風もやはり父の風合いが強くなっていると現在を吐露されたことが印象的だった。

書斎に置かれた「おつうのブロンズ」
(橋本堅太郎作)

藝術院賞受賞理由
 「日比野博鳳氏は日本古来より伝わる『かな書』の姿や風姿を基調にし、祖父日比野五鳳や父光鳳の書芸や芸術性により現代性を加味した書風を確立。今回の受賞作は越前和紙に金箔が引かれた加工紙に、寸松庵色紙(平安の古筆)をベースに連綿を多用した作品構成は往年のみやこ人の姿を連想させる秀作である。また、日比野氏は長く書道の教員として、中国における漢字の成立から各書体の名品を研究し、かな書にとどまることなく広く書の世界を見渡しながら後進の育成にも力を注いでいる」




受賞作 「春への移ろい」
(令和6年第11回日展出品作)