月刊美術新聞「全日本美術」最終号(2026年7月20日号)より
日本藝術院会員・日本書芸院理事長の土橋靖子さんの主宰する蛙園会が第4回展を開催した。正に激動の4年間を公私ともやり抜いて、しかしまだ気がぬけない時宜が続いている。少しの緊張感を孕みながら毅然と対応する姿勢は清々しい。
今展には土橋会長、木村通子理事長、中路佳保里理事長代行の超大作作品をはじめとして、常務理事16名、理事40名、幹事・評議員・会員・公募246名。それに学生コーナーを併催。また、役員による小品コーナー(17名19点)、若手選抜の「昴コーナー」(板﨑陸人、江田感、島田一輝、田代和則、比企百夏の5名、13点)も見応えあった。
さて、今展より三役と常務理事の作品をピックアップさせて頂いた。土橋会長の超大作は巻頭紹介のため、小品から2点を、木村理事長、中路理事長代行は超大作と小品を挙げる。
土橋会長「早春の湖」は赤彦の歌。渇筆の4行と潤筆3行の空間と重量バランスが絶妙、文意からやや潤墨の厳しさがあればと。「好花」は、元末明初の詩人袁凱が詠んだ五言律詩。万葉仮名調の漢字がソフトに響く。木村理事長は拾遺和歌集の水無月の歌を、2曲屏風のほぼ全面に、風が流れるように空間に浮かべた感ある。小品「雪」の繊細な響きは淡雪が溶け落ちる音さえ捉えている。中路理事長代行は、2曲屏風黄紙4枚に牧水の歌を梅林をやや俯瞰したような構成に布置した。三次元的な空間性がある。小品は、絹目料紙に石川啄木の歌を静かに置いた風情がある。
常務理事16名を挙げる。いずれもしっかりと鍛えられて、破綻ない。トップの書風に魅かれるのは当然だが、そこに自分の呼吸を入れる段階の作家である。大胆な荒井竜子、繊細な機微も欲しい。展開の面白さある石出直子。簡素な味わいがある石渕江美だが、2紙にして何処で魅せるかが鍵。じっくり味わえる機微を詰めた展開の石原裕子。能因法師の私家集の四季を島群に配置し、小・細字で大きく展開した小木曽郁子。奥村貴美子は思子等歌の長歌と反歌を優しい流れで綴り、終行の潤部で締めた。色紙20、扇12を貼り交ぜた尾崎洋子の繊細な仕事。坂井麻菜美の扇面展開は下方に支点あり、揺らぐ中の調和を保つ。茶紙に横展開する行の散らし、行空間が心地良くリズムを刻む武田美奈子。3紙に、2段書きを重ね終紙で締めた谷口成孝の挑戦作。津久井智恵美は左右の呼応感をどう構築するか。西田健の二段構成は巧いが無難か。矢口緑苑は目線を止めた部位が惜しい。安田節子はリズムが一部逃げた感が課題か。ひと工夫欲しい色紙貼り交ぜの吉田昌美。若くして抜擢された田代和則に期待。(松)
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※ 本ページの記事・作品画像は、月刊美術新聞「全日本美術」最終号(2026年7月20日号)より転載しました。