月刊美術新聞「全日本美術」最終号(2026年7月20日号)より
〈親しめる生活美術書作品〉と題した一東書道会恒例の書展。館内別室での『街なか書道体験』コーナーでの〈うちわワークショップ〉、展覧者へのお茶席を準備する等、ただ見せるだけでなく和気藹々の雰囲気がいい。今年は岩手、秋田、一部青森の彩り提灯と熊本の肥後象嵌が目だったが、置物、扇面、額作品、皿、帯作品も出展された。
井茂圭洞会長は、隅立屏風に良寛の歌「水も行かず月も来たらずしかはあれど波間に浮かぶ影の清さよ」と右部の上下の余白を受ける左部の引き締めの絶妙な布置で魅せた。また小品2点は、島木赤彦と若山牧水の同時代歌人の詠む自然の富士の姿を書き分けた。
長井素軒理事長は二曲屏風に持統天皇の歌「春すぎて夏来にけらし…」を単字の響きで綴り初夏のキリッとした爽快感を狙った。
深瀬裕之筆頭副理事長「夏山に恋しき人や入りにけむ…」、歌人の紀秋岑は紀貫之の叔父か年長の従兄にあたるが、同時代の人。古今和歌集にあと1首「冬歌」があるが編纂者である貫之は評価して2首を選定しているばかりか、古今和歌集の冬の巻では自分の歌の次に秋岑の歌が配されている。深瀬氏は何故このあまり知られていない秋岑の歌を選んだのだろう。終句のみを滲む潤筆として、上の句をすべて渇筆とした意図、書意を新たな構成の中に封じたように見えてくる。昨年末に続く快挙かも。(松)
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