今月の課題 「24 年振りのフィレンツェ…そしてパリ」(2) 編集主幹 松原 清
フィレンツェは、アルノ川のほとりに佇む赤煉瓦の街並と、石畳の路地が入り組んだ、ルネサンスの精神が息づく街である。
時差8時間はやはり相当きつい。目が冴えて眠れないところを騙し騙して翌日7時に起床。こじんまりとした30室程のホテルだが、朝食は豪華で、コーヒ、紅茶にクロワッサン、フランスパンほか各種のパンが付き、オレンジとグレープフルーツのジュース、大きくスライスしたチーズにサラミ、ハム、更にゆで卵、デザートに果物のリンゴなど、十分に満足するものであった。ただ、バスのお湯の出が悪いのには正直まいってしまった。古い街のホテルに付きもののトラブルだが、それも旅のひとつと思うしかない。
ホテルはセンター駅にほど近いところで、一番最寄りの観光スポットが歩いて5分程のサンマルコ寺院である。しかし、この旅行の出発前に、並ばずに殆どの美術館、教会、修道院などの入場が出来、バスや電車も無料、更に無料ワイファイも付いているというフィレンツェカードがあることを知り、まずそのカードを販売している場所探しから我々のフィレンツェの一日目がスタートした。ドゥオーモの向かいにあるインフォーメーションに聞くとバルジェッロ国立美術館のチケット売り場で買えるとのこと。地図を頼りに歩くが、その道すがらにある建物がすべて芸術品。壁画、彫像がさりげなく施されている。後で分かったことだが、この彫刻は凄い!と思ったことは当然で、ドナッテロ、バンコ、ギベティー、ベッキオの作品、守護聖人像を外壁に施したオルサンミケーレ教会だった。
バルジェッロ国立美術館は、瀟酒な中庭を持つフィレンツェ最古の公共建築物で、市長の役所として建てられ、後、警察所長の役所になり監獄も兼ねていて中庭で罪人の処刑が行われていたという。美術館として生まれ変わったのは1865年からで、ミケランジェロのバッカス像、聖母子像やドナッテロのダビデ像などが収蔵されている。そこから路なりに下るとアルノ川に出る。晴天の青空にヴェッキオ橋が美しく映える。川の対岸に渡り散策すると昼。ウフィッツィ美術館横の創業150年のトラットリアで郷土料理を食べ、(有名らしいがあまりお薦めでない)待望の美術館に向かった。
さすがにウフィッツィ美術館は広大である。以前訪ねた時は、ボッティチェリの代表作「ヴィーナス誕生」と「春」は比較的小さい部屋に並んで掛けられていたが、展示方法が大きく変わって、ボッティチェリ作品が2部屋に纏められている。隣室に師匠のフィリッポ・リッピの作品群があることも非常に参考になった。ダヴィンチ、デューラー、ペルジーノにジョルジョーネの部屋も。残念なのは、会場でのカメラ撮影禁止となっていたこと。3時間余り堪能して、次の日も見ようということで市内を巡りながらホテルに向かったが、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の広場で生チョコの市場の人だかり。そう、今日はバレンタインデーであった。 続く
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円