今月の課題 「企業30年説をぶっとばせ」 編集主幹 松原 清
企業30年説」という言葉を聞いたことがあるだろうか。小社も今年神戸全美30年を迎えるので調べてみたのだが……。
―「企業にも寿命があり、優良企業とはやされても盛りは30年まで」という内容であるが、日経ビジネスが1983年に資産総額のランキングを基に発表している。
その後、しばらくして2004年に日経NEEDSがその検証を行い、「本当に生きが良いのは最初の10年」、「元気な優良企業でいられるのは30 年まで」という結論を導いている。「会社の寿命30年説」はある程度事業に成功した会社に与えられる宿命のようなものだが、30年という節目は「小粒でも生きが良い」という最初のステージの限界点で、これを迎えるまでに規模を拡大しながらも変革を続け更に輝きを放つ次なるステージへとステップアップできなければ多くの企業が衰退してしまうということであろう。それに後継者問題が絡んでくる。その後継者問題が最も大きな問題ではないか…とのこと。
従業員が数十人以上いる企業にはある程度あてはまると思われるが、果たして全美のような特殊な世界の弱小会社に適用するかといえばどうであろう。全美発刊の趣旨に適う後継者がいればいるで有り難いが、やはり後継者問題が全美としての存続の岐路になるかもしれない。しかし、現在は無理に後継者を作ろう、育てようと思っていない。自分の使命(やりたいこと)を全うすれば良く、規模云々でない質の世界だと思っているので、死ぬまで学び関わっていくしかないと最近自覚してきている。当然一人で出来ることは限られるが、最低限の発刊設備は必要であり、小回りの効く仲間、同志がいればこれに越したことはない。何故なら評論の世界はやはり個の世界だからである。美の世界の歴史と知識、人間哲学と社会性をいかに自分の血と肉にするかが一番大切で、先ず商売ありきでないからだ。ロマンティストはいいが、人嫌いでお金好きでは美の存在が偏るように思う。しかし、評論誌を出す以上、その時その時の自分の立ち位置を常に意識しなければなるまい。筆者は30年近くこの仕事(評論と美術産業)に携わってきたが、ようやく美術に生きる深遠さと難しさ、そして楽しさを少しだけだが実感できるようになった。
では、作家はどうだろう。作家も一企業家とみれば、同じようなことが浮き彫りになる。後継者問題も然り。団体の経営もまさに同じだが、何を基盤に置いているかで視線はがらりと変わる。それは「美」の行方である。作家自身が商売人になってはならない。所属する会が存続するか分裂、消滅するかは会自体が「美の拠点」であり続けることが出来るか否かに関わってくるからだ。決して利潤追求が目的の集まりではないはずだから。しかし、前述した「拡大しながらも変革を続け更に輝きを放つ次なるステージへとステップアップできなければは衰退する」という企業と同じ要素も持つのである。
美への意識で企業30年説をぶっとばしたい。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円