今月の課題 梅雨時の石垣島に 編集主幹 松原 清
今年の梅雨はいつもと違う。梅雨はしとしとと降る雨に、心静かに考え事をする。そんな時間の流れの記憶が確かにあるのだが、近年はまるで熱帯地方の雨季に近い様相を呈してきている。そして、梅雨明け前にもかかわらず30度を越す真夏日の記録更新ラッシュで、熱中症で亡くなる人も出ており、異常の度合いは年毎に進んでいるように思われる。梅雨が明ければ、今度は年々巨大化する台風の脅威が控えているのだが、この熱暑の蒸し蒸し感からの開放(梅雨明け)を待ち望んでいるのは私だけではあるまい。
私事だが、関西の梅雨入の発表があった4日後(6月8日)に忙中閑で石垣島を訪れた。これまでに沖縄本島へは二度行っているが、離島には渡ったことがなく、是非南の海の色を堪能したいと思っていたところ友人の画家が、「スケッチ旅行をするから一緒に行きませんか」と2泊3日の旅行に誘ってくれたのである。正に渡りに舟とばかり同行を決めたが、それが5月半ばの頃。梅雨のことを全く考えてなかったことに行く直前に気がついた。旅行で一番気掛かりなのは天候のこと。当然旅行中の週間天気予報をチェックするのは誰しも同じであろう。前述のとおり出発日は、関西でも梅雨入して間もない頃で、沖縄はまだ梅雨明けに10日ほどかかり、石垣の旅行の3日間を含んだ週間予報はすべて雨という状況の中での決行となったのである。7月号のカラー最終校正を終えた翌日、事務所からの早朝の出発であった。この日神戸は晴れていたが、石垣はやはり荒れ模様の予想。「ままよ!」の境地で10時発のJALに。ツアーはT氏の生徒スケッチ組みの8名と便乗組み3名(私と妻と編集のS氏)。飛行の当初、ずっと一面に雲、雲、雲。それが、九州を過ぎた辺りから海が見えるようになってきた。ひょっとすると、大丈夫かもという期待感が。と同時に沖縄本島にさしかかる頃から面白い不思議な現象に気がついた。海の上は晴れているのに、島の上だけに雲がかかっている。熱せられた海と陸の温度の差のためなのだろうか。
石垣空港上空は晴天とまではいかないも、晴れ間の覗く天気で気温は31度、湿度は75%と蒸し暑い。しかし、うれしい予想はずれである。予約していたレンタカー3台に分乗して一路ホテルに向うが、先導のT氏の車が橋の横の小さな駐車場に止まった。引き潮の時で川は泥底が見え、岸にマングローブが一面に生えている。岸横の階段で下に降りるとシオマネキがおいでおいでをして、ムツゴロウが泥面を闊歩している。
ホテルで荷物を下ろし、翌日スケッチ予定の川平(カビラ)湾の下見に。真っ白い珊瑚砂とエメラルド色の海、海の色は太陽の光が不可欠なのだ。丁度引き潮で水量が少なく明日朝一番に来ればと、再び海岸線を走る。遠浅の海岸、平たい岩が水面の上に多く点在する。死んだ珊瑚礁の断片が岩状になっているのだ。砂浜はすべて珊瑚の粒。岸に乾いた珊瑚の欠片が重なっている。天気予報を覆す晴れ模様に大満足、夜は、八重山料理とサンシンの演奏で大いに盛り上った。〈続く〉
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円