今月の課題 クリスマスの台湾取材行 編集主幹 松原 清
師走から新年松の内にかけて、眼も回る慌ただしさの中に身を置くことは例年どおりであったが、そんな環境においても目新しいことがあった。その一つがクリスマスの台湾取材である。
日展が始まる数ヶ月前に河野隆氏から、台湾での海外初個展開催のことを話していただいていたので、その前記事紹介を考えていたのだが実現しなかった。というのも当時の河野氏は、事前取材が出来ないほど多忙を極めていて連絡をとるのも憚られる状態であったからである。先ず、日展出品作の制作、続く個展開催に係る包括的な準備と新作制作、新年早々の二十人展への新規制作と目白押しの状態、ましてや日展出品の「四海兄弟」が日展会員賞を受賞して、「時の人」となって忙しさが倍増したことも挙げられる。
「松原君、台湾に来る?」と声がかかったのは個展開催の1ヶ月ほど前。当方も新年号の編集真っ最中の頃である。やっと一段落して取材行の連絡を入れたのが2週間前で、すぐレセプションのインビテーションが届いたが、通常予約では飛行機もホテルも取れないことがわかり、先に台湾行きを決めていたアートライフ社のK氏に頼み込んで同行でのクリスマスのフライト(23日発、25日着)を押さえ、ホテル(なんとレセプション会場の天成大飯店〈コスモスホテル〉)予約もどうにか確保したのである。
帰国後すぐの新年号発送のため、その前準備で睡眠不足ながら朝5時起床で関空へ。台北のホテルに入ったのは午後1時を回っていた。チェックイン後に故宮に。タクシーを使わず電車、バス、徒歩でと言うK氏に従って台湾初の地下鉄、バスを経験する。台北に地下鉄が5路線開通していることも初めて知った。因みに、後の故宮訪問者の為その行き方を記しておこう。台北駅で2番の淡水信義線の淡水行きに乗車し、士林で下車。1番出口から150m歩くと広い道「中正路」に出る。その付近《ガードに対して右側》にあるバス停から「304」「255」「紅30」のバスに乗り、10個目が「故宮博物院駅」。バス内に「上車収票」ランプ表示ある時は乗車時、『下…」は降車時に料金を支払う。
故宮では歩きに歩いた。「翠玉白菜」「毛公鼎」「散氏盤」の展示に注目したが、全ブースを回るK氏、疲れ知らずである。その後に士林市場の屋台街を歩き、電車に。私は余程疲れた顔であったのか、生まれて初めて博愛座(優先席)を現地の人から勧められた。
翌日、パワースポットの龍泉寺(呉昌碩の篆書刻がある)にお参り後、河野氏の個展会場へ。その展覧記事は16面に記載している。注目の「四海兄弟」は、初世蘭臺の自在な刀法を意中にして制作した作品だが、来る台湾個展を見据えたものだったと思われる。リオ五輪をテレビ観戦し一喜一憂した時に論語の中の句から想起したと追加されていたからだ。これは作品集にもなく、現地取材でしか見られないものであった。祝賀会では台湾の有力者、蕙風堂社長・洪能仕との知己を得たことも喜びであった。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円