今月の課題 「2019年への飛翔」 編集主幹 松原 清
年末になると気になる話題がひとつある。今年を漢字一文字で言い表すとしたら……。12月12日に発表されたのは「災」。「災」が選ばれたのは2004年以来2度目。イラク戦争が勃発し、世界情勢が不安定に。また、日本に大形台風が相次いで上陸して大きな被害を出し、中越地震もおこった。
今年の状況を見ると、世界情勢では不安定化は中国、朝鮮半島へシフト。特に、日韓の関係は戦後最悪の関係に陥りつつある。国と国が結んだ条約が、政権が替わると反古にされるというありえないことが起こった。北朝鮮の核保有問題と裏で絡んでいるような気がするが、国のありようを改めて考えさせられる昨今である。まるで他人事のように「災」を思っていないだろうか。身に降り掛かって初めて真実を知ったのでは手遅れなのである。そもそも国とは何ぞや!ある書物によれば、国は戦争を行う為の組織であるという。6000年続いたとされる青森県三内丸山遺跡、そこには戦争の気配がない。自由で、助け合い豊かな情緒を持った世界が代々続いたのだ。スペイン艦隊を撃破したイギリス。最初に世界の覇者を望んだのは、イギリスのエリザベス一世で、有名な「私は国家と結婚した」の言葉が残る。偶然の一致か、織田信長も東洋の覇者を指向していたと聞く。信長がエリザベス一世と同じ年に生まれたと聞いて、発明の同時代論を思った。発明といえば、戦争が文明を加速したことは紛れない事実で、夢として描いていた月旅行、腕時計式電話やパソコンが今や当たり前の世界となり、クローン生物までが創られるようになった。既に人工知能(AI)は人の脳の代用となり、人知を越える境界点は10年〜20年先だとか。北朝鮮の核、尖閣諸島、沖縄への中国の脅威は現実的だが、それを凌駕する大問題(漫画でみた人工知能に制御された人類)そんな世界がすぐそこまで迫っているのかも知れない。
ずいぶん暗い負の部分を記してきたが、そうしたことを踏まえて自分自身、個としてどう生きるかが本当は大切である。好きと嫌いに関わらず僕たちはこの時代に生きてしまっているのである。やはり、言うべきことは明確に言い、困難を避けずに前に進むしかない。何もしないと人間の自由も拘束されてしまう。何の為に生まれてきたんだ!少なくとも生きた証(自分の心の中だけでも)が残せるよう生き抜いていきたい。藝術は哲学同様、AIに理解(計算)出来ない分野である。本当に人間らしい人間のみが出来る崇高なものだと断言できる。経済と密接に結びついてしまった藝術だが、本物は絶対に滅びない、そう信じて2019年を迎えたい。 皆様のご健勝を祈念致します。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円