今月の課題 「テーマとモチベーション」 編集主幹 松原 清
新型コロナの2度目の緊急事態宣言が出され、特にターゲットとなった夜の街のスナック、バー、大衆酒場等の灯りが消えて久しい。一応解除の方向で決まったが、まだ東京近郊は2週間の延長が実施されている。本当に感染者拡大の主要因だったのか、という検証がされていない中での緊急事態宣言だったと言えよう。
話題を変えよう。前々から思っていたことだが、人のやる気、持続力を支えるものは何だろう。と言うことについて少し触れたい。
ビジョン、テーマ、コンセプト、モチベーションというよく使われる外来語があるが、多くの人が、混同して使っているのではないかと思える。解っているよと言う声を少し棚に上げて言葉の本意(辞書)を記してみる。
ビジョンとは「将来のあるべき姿を描いたもの。将来の見通し。構想。未来図。未来像」とある。将来なりたい姿の状態や光景のことであり、自分自身(国家、会社も)が実現したいことや、実現した時のイメージをクリアに描いた「未来の青写真」ともいえる。
テーマとは「主題、題目」気分・情調や筋の展開・思想などを主とせず、ある問題やそれについての作者の見解に重点をおいた、小説や音楽、芸術全般の主題。テーマパーク、テーマソングなど。
コンセプトとは「概念、発想、構想」全体を貫く統一的な視点や考え方。コンセプトカーやコンセプトカフェなど。
モチベーションとは「動機を与えること。動機づけ、誘因」行動を始発させ、目標に向かって維持、調整する過程、機能を言う。また、動機づけは人の欲求より生まれ、次元的段階から順に記すと、(1)生理的欲求、(2)安全欲求、(3)社会的欲求、(4)承認欲求、(5)自己実現欲求である。(5)が最も高次の動機づけとなり、芸術の目指す世界と大きく重なるように思える。
それぞれ概ねの定義を述べたが、芸術における重要性を鑑みると、テーマとモチベーションが浮上してくる。「テーマ」は映画や絵画など芸術作品に対して使う言葉、と言い切る人もおり、「テーマ」の実現に向かって「 モチベーション」をしっかり持ち、自己実現に向かって努力することこそ芸術家たる資質の根源だと思うのだが、どうだろうか。何を表現したいのか、そうした初期動機を大切にして思考を巡らせ、技術を高め、己の限界を高みへと指向することが作家に求められた重要な課題といえる。
とは言え、私たちは社会の中で生きており、社会の中のビジョン、コンセプトとも大いに関わっており、「モチベーション」がブレない為に「コンセプト」が重要になる。それぞれ4つの言葉が、微妙に関連していることも付記したい。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円