今月の課題 「コロナ禍、環境問題」 編集主幹 松原 清
5月に入り、新緑の若葉が爽快な季節が巡ってきたが、人々は外出を制限され鬱々とした日々を過ごす単調な生活を強いられている。3回目の緊急事態宣言下、関西人の憂さ晴らしは、奇跡の連続首位を続ける阪神の絶好調くらいである。
この1年半、1回のクラスターも出さなかった美術展だが、公立美術館、博物館も休館処置がとられ、やっと美術行事が回復しそうになった芽も摘まれそうだ。感染対策の万全を条件に主催者の判断に任せるべきと思うのだが、これは如何なものか。2年連続で開催断念を余儀なくされた会もあり、関連業者も含め美術界に大きな問題を孕みつつある。弊紙も、通常取材が困難になりつつある現状にどう対処していくか、その継続に頭を悩ませている。日本国民には厳しい自粛を叫びながら、海外からの入国管理の甘さ(PCR陰性で外出自粛3日間に対して誓約書違反30%)が指摘されているが、あきれかえる行政の対応の一例であろう。
そして、いよいよ日本も遅まきながらワクチン接種の通知が送られてくるようになった。自国で相応のワクチン製造能力は十分あるはずだが、政府、厚生労働省は動かなかった。1年程度の副反応検査で、血栓、不妊問題を含みながらも許可されたワクチンを日本は購入することになった。医療従事者、海外の仕事に出国する人、そして高齢者と優先度が語られているが、ワクチンの確保量と速やかな接種方法も何故か曖昧で、例えば国民の何十%の接種で終息カーブを描くようになるのかも知らされていなく、科学的な根拠の説明も一切ない。インド、アメリカ、ブラジルなどは喫緊の課題だが果たして日本はどうか?
あと、少し環境問題を自動車で考えてみたい。電気カー(EV)と、水素カーである。ふたつの新技術の基礎は日本が開発したのだが、今やアメリカと中国に取って代わられようとしている。
EVはハイテク企業が主導権をとり、生産は下請け分散に。水素カーは排ガスが水となり、エコカーとして脚光をあびている。しかし、問題は電気を石炭火力で作る中国。アメリカも意外に石炭火力は多い。要は車で排ガスは出ないが、燃料の電気でCO2、NOx をばらまいているのである。水素カーは素晴らしいが、液体水素化に電気を大量に使用する。トヨタは言う。自動車がすべてEVになれば日本の産業は死ぬ、と。自動車産業は日本の全製造業の18・8%、自動車関連産業の就業人口は542万人(いずれも2018年度)であり、本当はエンジンを積むハイブリッド、燃料液化を更に工夫した水素カーを基本路線として国策に組み込むべき課題と思われる。EV化は恐るべき失業者を生む。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円