今月の課題 「2022北京冬期オリンピックと世界情勢」 編集主幹 松原 清
2月4日より北京で冬期オリンピックが開幕した。丁度、弊紙の原稿締めと校正作業がピークとなる期間で筆者は事務所に缶詰状態、テレビも置いておらずネットなどで開幕式を見ることも叶わなかった。レーザーを多用したプロジェクション・マッピングで中国のデジタル技術の進化を見せつけたようだが、少数民族の文化の紹介はなかったようだ。
IOCと契約したテレビ局のみの独占放送が通常となり、莫大な金銭が飛び交う。候補地の選挙からして目を覆いたくなる賄賂と不正行為が横行している。「何のためのオリンピックか!」と思う反面、いざ開幕するとテレビを覗いてしまう自分がいて苦笑いする。やはり自国選手の活躍に期待し、心おどる現実があるからだ。一年延期された東京オリンピックもコロナ禍の中、異例づくしの開催となったが、それでも感染予防対策下での自由度は選手、民衆に与えられていた。一部福島の被爆被害を逆撫でする国もあったが、地方に分散した各国選手団と地元民との交流もそうだし、各国がよせる日本の印象は悪いものではなかった。
今回の最大の栄誉は、一都市夏・冬オリンピック唯一の開催地として北京が立候補し、開催権を獲得したことだろう。中国の威信をかけて是が非でも成功に導くというなり振り構わない強引な施策がとられている。
先ず、北京は殆ど雪が降らない。人工降雪機で大量の雪をまいて凍らせる。温度は低いのでカチカチの氷の塊と化すのだ。転倒しようものなら大けがに直結する。現に、日本のスノボー選手が練習中に転倒、脊椎損傷で大会を欠場する事故がおこっている。また、降雪機の大量地下水使用で付近の住民は水不足になっているとか、また閉幕後の気温上昇で雪解けによる被害も当然予想できるだろう。
更に、中国を取り巻く世界の状況も厳しい。アメリカのウイグル人ジェノサイドに係る宣言がヨーロッパ他に飛び火して大変な事態に発展している。ひとつは外交ボイコットだ。日本は最後の最後まで決定できずにいたが、宣言に至った。恐らくアメリカの圧力で自由主義側への踏み絵を踏まされたようだ。平和の祭典に政治を持ち込まないという基本的事由を前面に打ち出しての決定だが、実際は政治色にまみれた状況であることに相違あるまい。空港は防護服、ホテルは鉄のカーテン、選手村から一歩も出られず市民と隔絶された祭典の内情、毎日実施されるPCR検査。強制的にインストールされるGPS入りの公式アプリ。FBIから自前の携帯は持ち込むなとの厳重要請も出ているとか。閉幕後、台湾、尖閣、ウクライナ問題が急浮上か。不気味だ。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円