今月の課題 「皆既月食に思う」 編集主幹 松原 清
早いもので、11月の声を聞いたと思ったら、もう10日が過ぎてしまっている。新聞、TV 、ネットで大々的に喧伝されていた皆既月食だが、442年振りに皆既月食と、月が惑星を隠す惑星食(天王星)を同時に観察できるのだという。そんなニュースが耳に残っていて、私も仕事を中断して、夕食の合間に外に出て夜空を見上げたのだ。神戸の街灯りで星は明瞭に見えないが、晴天に近い中にさすがに月はくっきりと地球の影の中に入りつつあった。正直、子どもの頃に煤をつけた硝子越しに日食観察をした記憶はきっちり残っており、その後も幾度か見入ったが、皆既月食をじっくりと見た覚えがない。完全に皆既状態となった時の、赤銅色の月は幽玄で、別世界の夜空かと思わせてくれる。実は皆既状態に波長の長い赤光が僅かに浸透して、黒色を赤銅色に変化させると聞いたが、空気中の塵が多いと乱反射して黒くなるのだとか。そう、日本の空は結構きれいだと、なぜか少し感心した。情報があるから不安にならないが、昔の人がこの現象を直視したらどうだろう、皆既日食と同様に何か不吉なことが始まると思うに違いない。今でこそ天体ショーとしてわくわくして見れるが…。が、果たしてそう言い切れるのかどうか本当のところは解らない。人間も宇宙のひとつの存在としてみれば、例えば惑星直列の重力場とか太陽のフレア爆発の強烈な電磁波の影響を受けているのは事実で、どのような作用が脳と体に働いているか解明できていない。星の運行で運命を予測する占いが廃れないのも何か因果関係があると古くから統計的に伝えられていたからだろう。
ふと、思った。ロシア、ウクライナ、中国、北朝鮮の人達、特に指導者はそうした現象を精神的にどのように捉えているのだろうと。まあ、取るに足りない現象なのだろう。天体ショーが終わり、日本以外で観察できた国はあるか調べてみた。が、11月10日は殆ど日本のみと判明。実はヨーロッパでも今年5月、皆既月食(惑星食はない)が観察できたらしい。暗い影を落としつつあるのは、今や独裁国家であろうと思いたい。因みに次に日本で皆既月食を観察できるのは、3年後の9月8日とのことだ。
さて、秋まっさかりである。暦的には初冬に入ったばかりだが、紅葉は今がピーク。京都、日光など観光地も賑わっている。芸術の秋もコロナ禍の影響を受けながらだが、例年の展覧に戻りつつある。日展も佳境に入り、国立新美術館の展覧者も増え、銀座界隈の個展、グループ展もやや活性化している。これに経済が上向きであれば暮らしに不安はないが、アジアの安全保障は未だに不安だらけだ。良い年末年始を過したい。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円