今月の課題 「今を思う」 編集主幹 松原 清
コロナ禍がようやく終息し、会場が突然使えなくなるような異常事態はなくなり、祝賀会、懇親会も徐々に開催されるようになった。ワクチン接種をしても感染する現状、ましてや死亡、重篤な後遺症を引き起こしながらワクチン主導した政府、医療機関は口をつぐんだまま何も責任をとらない。新聞、テレビなど報道機関も右へ倣えだ。何かとんでもない利権の闇が隠れているように思える。一個人のたわごとだが、美術活動がスムーズに回りだしたことは確かだが、しかし、3年間の制限がはずれて個展予定の作家が一挙に増えた感もある。筆者個人の疾患のため、隔月発行となり紹介月が1ヶ月遅れる事態も発生し新鮮さが少し損なわれることをお詫びしたい。
それにしても世界の様相は大きく様変わりして平和が失われてきている。昔、どんな課題を書いていただろうと思い、保存版を読んでみた。23年前からの手紙の感があった。
『2001年をひとつの漢字で表わすとすると、あなたは何を想像するだろうか。毎年恒例となった「今年の漢字」に“戦”が決まった。
確かに米国の同時多発テロは全世界を震撼させた狂悪な犯罪であった。その報復としてアフガンのタリバン・アルカイダ攻撃が年末まで続き……当然、戦争のイメージが我々の頭の中に残ってしまった。「目には目を、歯には歯を」の直情的な対応は、いかにもヤンキー気質と云えるが、力づくでは人の心まで抑え込むことは決して出来ないと思う。第2、第3のビンラディンが出てこないことを祈るしかない。それには、報復が報復を呼び収拾がつかなくなる愚挙だけは絶体に避けなければならないと思う。
第二次大戦直後、中国大陸でまだ復員できなかった日本の兵士をあつかう際、以前に受けた怨みに徳をもってせよ、と時の国民政府主席の蒋介石が云ったというが、この老子の教えこそ今の世界秩序を正すもののように思える。これはこの世をどう生きるかを説いた言葉で、要約すればは真の道(無為・無事・無味)の実行であり、そのような心で生きていけば、怨みにも恩恵で報いる大切さがわかると言っているのであろう。非常に奥深い哲学であり、現代の自己中心主義とは対極にあるといってよい。今すべてが利の為に動いている。人の心は抑えられ、行き場を失ってあえいでいるのである。富む人はより富を求め、益々貧富の差はひらく一方である。
構造不況の出口すら見えない中、私達も理想論ばかり言っていては何も始まらない。要は、心の奥に目標を持って現実に対処していかねばならない。自分の夢は捨てたくない。着実に一歩を進めよう』……いよいよ気持ちを引き締めないと。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円