今月の課題 「どうなる2025年(昭和100年)」 編集主幹 松原 清
今年の漢字が決まった。全国から22万1971票の応募があり、1位『金』(1万2148票)。今回で5回目の選出というが、2位の「災」(9772票)に約240票の差をつけ、3位「翔」(7487票)、4位「震」(7427票)と続く。「金」の選出理由としてパリ五輪・パラリンピックでの金メダル奪取や、佐渡金山の世界遺産登録の他、自民党総裁選から解散総選挙の裏「金」問題、「金」に釣られた闇バイトによる強盗事件、物価高騰の側面、103万円の壁もまた「金」が大いに絡む。
さて、筆者もあまり気にしていなかったが、令和7年は昭和100年にあたると誰かに教えてもらった。私自身は団塊の世代の最後の昭和25〜26年生まれ。丁度、池田勇人蔵相の「貧乏人は麦を食え」との答弁があった年代で、中学は14クラスも有り、修学旅行のバスが十数台続く景観はまさに圧巻だった。確かに裕福ではなかったが、外で遊ぶのは当たり前、紙飛行機や板を削って帆掛け船など手作りのおもちゃで暗くなるまで楽しんだ記憶もまだ鮮明に残っている。1970年の第2次安保闘争の折は、高専生だった。私はノンポリで、ブラバン、絵画、卓球と三つの部活の掛け持ちで政治に関心を寄せず、青春を謳歌していた。なんら問題意識を持たなかったが、不思議と美術の世界に魅かれていったのもこの頃からと思う。
高専を卒業して、機械科に相応しく企業に入社して技術部、設計に配属されたが、ここで労働組合に誘導されて役員となり、世の中の仕組みを学んだ。春闘も全国金属は過激だった。搾取する側とされる側の一律相反の理論の貫徹で、行け行けどんどん。利益があり取れる時は良かったが、景気が落ち込むと悲惨だった。2度の合理化を経験して、会社も労働者も運命共同体という当たり前のことを実感した。近年の韓国の労働組合の活動を思うと元大統領・文在寅の急激な最低賃金大幅アップとの絡みが韓国経済不況の根源と改めて思うしだいである。
原子力の必要性と危険性を職業上鑑み、企業を離れて趣味の美術を本格的に学ぼうと思ったのは今から38年前。美術新聞の制作など経験ゼロの私がここまで続けられたのは、発刊当初に尊敬できる作家に出会えたからで、当時はもっと意見の対峙があった。一国一城の猛者も多く、個展を開く為に土方をして必要経費を貯めたなど頻繁に聞いた。今は、ほんとに住み難い環境になった。筆者も含め本来の評論の世界が狭いところに閉じ込められて身動きができなくなりつつある。
平和な世界を希求し、明日を担う鮮烈な大志を持った作家の出現を期待するとともに、新たな評論者が生まれる美術界の再構築を願って。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円