第59回日本伝統工芸展より
―独創の和紙染刳抜の技―
江口 勝美
日本伝統工芸展の第59回展より、江口勝美氏の作品をピックアップさせて頂く。ほぼ正確な12角形の蓋付きの「和紙染刳抜陶筥」である。この、刳抜(くりぬき)とは、たたいて立方体に成形し、乾燥させた陶土を特注の鑿でくり抜く技法で、収縮率を計算しながら上下寸分たがわずに焼き上げる技術は難しく、完成作は1割にも満たないというが、本作品も蓋合せは完璧である。そして、染付は和紙染で、花文様と葉文様の形を整えた吸水性の良い和紙に一枚一枚ダミを施し、貼り付けて染め付けており、極めて多大な労力を要する作業工程である。全部手書きのダミ入れのため、微妙に文様が異なり、描線も柔らかく温かいのが特徴である。
江口氏は昭和11年佐賀県藤津郡塩田町で代々続いた窯元に生まれた。父の江口春次氏は名人と言われた初代奥川忠右衛門氏とは兄弟弟子で、大いに影響をうけたと語るが、氏も気がつけば陶芸の道に入り込んでいた。昭和27年武雄高等学校卒業後、佐賀県窯業指導書に勤務すると同時に作家活動に入り、後、かつての「織部唐津」様式の「小山路窯」を再興した。平成9年地域文化功労賞。佐賀県重要無形文化財保持者。
(松)