雄大な夢幻のイメージを
理事長 町田 泰宣
一昨年、北京に於て北京画院との日中合同展を成功裡に開催し、その翌年京都で日本巡回展を実施し、対等で純粋な絵画交流を実現させた(社)日本南画院の理事長町田泰宣氏の第47回日本南画院展出品作「夢玄境」を紹介させて頂く。
この作品の取材地は中国の秘境「張家界」である。中国の国立公園であり、世界遺産にも登録されており、一昨年の北京展後訪中団で訪れ、全員がスケッチ取材を堪能した印象深い場所である。昨年もこの地を主題としてネガ・ポジ逆転の発想で幽玄な大自然を表現したが、今回はもう一歩イメージを膨らませて心象的俯瞰構図で秘境を捉えた。摩天楼の如く林立する奇峰群、実景は小川越しにそれらが迫ってくるのだが、高山から見下ろした全景を自らの心象風景に昇華させて再構築させている。小川を渓谷を流れる雄大な大河として想像展開したことも重要ポイントだ。また、パノラマ的視界を後景に重ね合わすことで秘境の深さを強調し、奇峰にかかる明け方の空の光明と、昼間のように輝く河のマグリット的対比を加味することで非現実(シュール)な空間を導き出している。その非現実さが、墨の深みと相まって夢幻な雰囲気を醸しだしているのである。町田氏はこれまでも現実風景を根底に据えながら、イメージ空間を重ね合わす構成手法で制作を続けてきているが、今作は意図的構成が画面の中に包含されて自然な深みとして表現されており、真に心象の世界に遊ぶような「写意」の境地に更に一歩足を踏み入れた感がある。
町田氏のこの「夢幻境」は、またある意味現在の南画院の会員達に向かってのメッセージが込められているように思える。水彩画のように外形線を残して影をつける水墨画が多くなったが、そこからの脱皮を促しているようだ。ぼかし、墨溜まり、重ね塗り等を駆使しながら形状を浮かび上がらせている。また、胡粉の白の輝きと僅かな金色の色使いが懐古的風景でなく、現代に息づく南画を象徴しているようである。今後の南画のキーマンとして注目したい作家である。
(松)