第53回白鴎書道会展

中村天香 米寿展展

 

 九州かな書の名門、白鴎会の53回展開催にあたり、創立者・中村龍石氏の生誕100年と現会長の中村天香さんの米寿が重なり、熊本県立美術館分館の1階から3階を生誕100年記念展、米寿展、白鴎書道会展に分けて展示された。
 12年前の平成13年、龍石氏の3回忌に遺墨展が開かれ、そして3年前の第50回記念展に併催して遺墨展が開催されたことは記憶に新しいが、こうした大回顧展を3度も実施する天香さんの度量の大きさと白鴎の結束の強さを改めて思った次第である。さて、今回は道元の大字大作をはじめとした作品筆、墨が並んだ。特に注目した5点を挙げたが、第3回日展で特選の「天地は」の闊達で伸びのある線、芭蕉の句を書いた「菊の香や」の匂い立つような味わいは群を抜く。蛇笏「地と水と」の屏風は前回もとりあげた名作だ。貫之「わが心」のしみいるような墨立つ線の響きも格別、山頭火の小品も龍石氏の心の機微が窺える逸品であった。
 一方、天香さんの米寿展は、小倉百人一首2作を中心に、58点の作品の展観となった。機微細やかな細字に凛とした品格を宿す壬生忠岑「春きぬと」、温かな空間を感じる小字「あらたしき」、そしてゆったりとした運筆で気韻を醸す大字作品2点を紹介したが、夫君の龍石氏亡き後、ひたすらに白鴎の書学姿勢を守り育ててきた才と気骨を感じた米寿展であった。   
 さて、第53回展を迎えた白鴎書道会展だが、約の作品が3階の展示場に並んだ。役員作品より10点を挙げたが、龍石、天香調を継承するなか、夫々に風を感じられる。中村天馨副会長は京都調を加味した修練が窺え、次代に如何に続けていくかという課題に真摯に取り組んでいる姿勢も窺えた。関東勢も柴田多計子副会長を中心にしっかりと白鴎を支えている。
 今展の白鴎賞は、神奈川の福井みち子と佐賀の稲富秀華が受賞した。(松)

 

山寺の…(横井也有) 136×34

 

 

 

 

あらたしき…(万葉集)  36.5×48

 

 

春きぬと…(壬生忠岑) 36×49

 

わがほりし…(中皇命 万葉集) 59×178