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Work No.55

磨すれども燐がず 他

第36回読売書法展(2019.09.10)
〔収録作品〕
①霞立つ春日の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ(「万葉集」巻8-1437 雑歌)
②磨すれども燐がず(磨而不燐「論語」陽貨第十七)
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-切れの良いリズムの仮名作品と
言葉の深み宿す調和体作品-

第36回読売書法展より、現在のかな書作家の中で、次代を担う期待作家黒田賢一作品をピックアップさせて頂く。
黒田氏は若くして正筆会の精鋭と期待され、22歳で日展初入選。その後日展連入、毎日展で毎日賞を受賞し順風にのる勢いであったが、昭和54年突如として大きな試練に遭遇する。西谷卯木師の急逝である。大きな支えを失ったが、ここから氏の本領が発揮されたと言って良いだろう。関戸、一条などの古筆ばかりか王羲之、何紹基、趙之謙など漢字系まで積極的に研究、自身のかな表現を探ったという。そのことが今に生きている。二度の日展特選を果たした翌年、44歳という若さで正筆会の理事長に大抜擢される。相次ぐトップの逝去による正筆の存亡の危機に大改革が実施されたのである。55歳で現代書道二十人展メンバーに。平成21年日展内閣総理大臣賞(63歳)、23年日本藝術院賞を受賞、その後病魔に襲われるも完全復帰、現在日展理事、日本書芸院理事長としてある。
さて、作品に目を移そう。横作品は万葉集の「梅花」を詠った大伴宿祢村上の歌(巻8-1437雑歌)であり、令和の典拠となった歌ではない。せっかく開花した梅の花を散らしたくない思いと作家の思いが重なったとみたい。鋭利な書線ながらどこか膨らみ感じる線状の変化、曲直の微妙な展開が流れを生み、後半の渇筆部に収斂していく。正に黒田かなの新骨頂が窺える作品である。もう1点は、論語より選文された「磨すれども燐がず」。燐は、うすら〈ろ〉ぐとよみ、意は、ほんとうに堅い物は、いくら磨いても薄くはならないから転じ、信念のある人はどんな抵抗、障害があっても挫けたりすることはないこと。過去に鍛えられた漢字が時間の中で醸成し、空間意識と相俟って言葉の内面をしっかりと繋いでいる。次のステージへの準備は万端だ。 (松)

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霞立つ春日の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ「万葉集」巻8-1437 雑歌 — 黒田賢一
霞立つ春日の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ「万葉集」巻8-1437 雑歌
磨而不燐「論語」陽貨第十七 磨すれども燐がず — 黒田賢一
磨而不燐「論語」陽貨第十七 磨すれども燐がず