―和漢の調べ―● 5月31日~6月5日● 日本橋高島屋S.C.本館6F美術画廊この度、土橋靖子さんが日本橋高島屋で「和漢の調べ」と銘打った書作展を開催される。この号が届く頃は、開催直前になると思われるが、前回同会場での書作展「和を紡ぐ」から7年、随分と土橋さんの環境に大きな変化が生まれ、ご本人にとっても新たな決意と自覚が生まれた期間であったと思える。書作展後の改組新第3回日展「墨染」で内閣総理大臣賞を受賞、その2年後(2018年)に日本藝術院賞を受賞、その後は日展に於いても、また読売書法会に於いても責任ある役職を任されるようになり、日本書芸院で初の女性理事長に就任され、更なる期待が寄せられている。新たに立ち上げた「蛙園会」の発足一周年記念の選抜書展が昨年末開催され、更に今年6月29日より7月9日まで第1回蛙園会書展が国立新美術館で開催される。本書作展に話を戻そう。筆者は年初から次の作品展の開催をお聞きしていたのだが、3月末にメールで概略を知り、そして詳しい画像データが4月初旬に、続いて完成された作品集が4月中頃に届いた。分厚い作品集を開いて気になっていた六曲一双「和漢朗詠集抄」は、全48枚を継紙して上巻と下巻から土橋さんの感性で選別し書され、再構成された唯一の「和漢朗詠集抄」であった。どうして「和漢の調べ」が今回のテーマとなったのか、実は前回の「和を紡ぐ」のテーマに、「ことばの世界」の背景には、それが生まれる土壌がある。とのメッセージが添えられていたのである。確かに仮名がうまれた平安時代は歌を朗詠する中国漢詩の流れが定着し、漢詩を基に和歌を詠じる才人が多く生まれており、それが書されるようになる。唐絵が描かれた漢詩を基に、和様の絵に和歌が書されるようになり、それらも朗詠されるようになる。和歌のやりとりで恋の成就が決まる艶麗優雅な宮廷貴族だけがその栄に接することが出来たと云うのでもあるまい。かな、うた、朗詠は下層役人や僧侶、商人においても教養、学問としての大きな礎となったと思われる。歌はことばを紡ぐ。そして書かれた歌、ことばは人の心の根底に流れる情感をつなぐのだ。「和漢の調べ」は、かな書のルーツを再検証するものであり、様々な技法の継承は表現追求の証しと言って過言でない。ステージアップされた土橋さんの作品に直に接して、その表現の奥にある風景を多くの人に感受して頂きたいと思う。(松)
―和漢の調べ―
● 5月31日~6月5日
● 日本橋高島屋S.C.本館6F美術画廊
この度、土橋靖子さんが日本橋高島屋で「和漢の調べ」と銘打った書作展を開催される。この号が届く頃は、開催直前になると思われるが、前回同会場での書作展「和を紡ぐ」から7年、随分と土橋さんの環境に大きな変化が生まれ、ご本人にとっても新たな決意と自覚が生まれた期間であったと思える。書作展後の改組新第3回日展「墨染」で内閣総理大臣賞を受賞、その2年後(2018年)に日本藝術院賞を受賞、その後は日展に於いても、また読売書法会に於いても責任ある役職を任されるようになり、日本書芸院で初の女性理事長に就任され、更なる期待が寄せられている。新たに立ち上げた「蛙園会」の発足一周年記念の選抜書展が昨年末開催され、更に今年6月29日より7月9日まで第1回蛙園会書展が国立新美術館で開催される。
本書作展に話を戻そう。筆者は年初から次の作品展の開催をお聞きしていたのだが、3月末にメールで概略を知り、そして詳しい画像データが4月初旬に、続いて完成された作品集が4月中頃に届いた。分厚い作品集を開いて気になっていた六曲一双「和漢朗詠集抄」は、全48枚を継紙して上巻と下巻から土橋さんの感性で選別し書され、再構成された唯一の「和漢朗詠集抄」であった。どうして「和漢の調べ」が今回のテーマとなったのか、実は前回の「和を紡ぐ」のテーマに、「ことばの世界」の背景には、それが生まれる土壌がある。とのメッセージが添えられていたのである。確かに仮名がうまれた平安時代は歌を朗詠する中国漢詩の流れが定着し、漢詩を基に和歌を詠じる才人が多く生まれており、それが書されるようになる。唐絵が描かれた漢詩を基に、和様の絵に和歌が書されるようになり、それらも朗詠されるようになる。和歌のやりとりで恋の成就が決まる艶麗優雅な宮廷貴族だけがその栄に接することが出来たと云うのでもあるまい。かな、うた、朗詠は下層役人や僧侶、商人においても教養、学問としての大きな礎となったと思われる。歌はことばを紡ぐ。そして書かれた歌、ことばは人の心の根底に流れる情感をつなぐのだ。
「和漢の調べ」は、かな書のルーツを再検証するものであり、様々な技法の継承は表現追求の証しと言って過言でない。
ステージアップされた土橋さんの作品に直に接して、その表現の奥にある風景を多くの人に感受して頂きたいと思う。(松)