12 年の時を経て令和の春に!!
時空を超えて あの名作が蘇る

中島司有書作展


● 3月5日〜9日
● 銀座プレイス3F・パノラマスペース
common ginza

 

「朱鷺衰滅を憂ふる報道に接して」 滅ぶとや雪の化身の裔絶えて ニッポニア・ニッポン永遠に滅ぶとや 藍深む佐渡の入江の殘照に 翼燒きつつ逝くか火の鳥 日本海凍る波濤も滾らせて 生命あたへし天つ鳥朱鷺よ 火の鳥よ雪の越路に生き耐へて 血潮護りてよみがへり翔て 還り来よ火の鳥朱鷺よ生き 耐えて日本の空を覆へ火の鳥 人はすさび國土荒れ行く悲しみに 天に還るか鳥船朱鷺よ 遠行きて終に再見ぬ幻と 戀語りせむか涙垂りつつ 厭離穢土欣求浄土の 火の鳥に縋れど宙に もどかしき指 雪の化身 炎の翼 鐵の嘴 纖き朱の脚 滅び果つるか 朱鷺は逝く 紫紺の天に翼張りて 天女の舞を演ぜしは何時 朱鷺逝きて 挽歌も絶えし北岬 重き雪雲 昏き海鳴      自詠歌 (紺絹本金泥・四曲屏風)1985 年

 

 「12年の時を経て…」というサブタイトルのとおり、先の中島司有書作展が開催されたのは司有氏の7回忌にあたる2008年3月。その前年に「中島司有と書の世界−やさしき阿修羅−」が発刊された。司有氏の生きた証が集約された1冊であり、「阿修羅讃歌」など、そこに収められた作品のうち自詠の詩歌を中心に開催された。その折にも今回紹介の「朱鷺衰滅を憂ふる報道に接して」を拝見している。実は筆者がこの作品に接して、震える程感激したのは、現地で大好評を受けた1991年の3月、フランス・マントン市での中島司有書作展、同年8月に神戸で開催した帰還展の時であった。凛としてやや長体の正楷がことばを繋いでゆく。日本固有種の「朱鷺:ニッポニア・ニッポン」の衰退報道に、心から悲しむ無念の吐露が文字の奥に突き刺さってくる。五七調の自詠の歌がひたひたと文字の中に滲み通っていくそんなイメージに打たれたのだ。
 今展の会場入口にこの作品と4度対峙し、ことばと文字の凄さを再確認したところである。スポットが当たり、ややハレーションを起こしている箇所があるが、作品の臨場感を思い、あえて会場撮影の作品写真を掲載させて頂いた。あれから29年経ったが、紺絹本金泥の本作は、微動だにしないほど司有氏の心の叫びを孕み続けている。
 他、書が造形芸術だという証となる「天地創造」や「巌窟王」。心象的な作品「薔薇」、掘り文字の「哭壁」など全61点が並んだが、その中ふっと目に止まった小品があった。ぽつぽつとした配字が絶妙な響き合いを醸し出している佐藤春夫詩「秋刀魚の歌」1977年作である。ちゃめっけな部分が同居しながらも、見ながら吟じてみたくなる味わいある作品だ。最後にリクエストがある。筆者が初めて涙を流した作品「灯籠流し」を再び。(松)