第59回 現代書道二十人展より
―艶にして閑雅― 日本藝術院会員 井茂 圭洞
第59回現代書道二十人展より井茂圭洞「琴/古事記」をピックアップさせて頂いた。新日展出品作の「畝傍山」を会場で拝見した瞬間、「えっ!!何この紙この色」という声が出てしまっていた。遠目には古い蝋箋紙に見えたのだが、ややピンクがかった朱赤に曲直の機微ある書線がくい込んで凛とした輝きを放っていた。気にかかりながら新日展東京展は終了。今回の現代書道二十人展で同じ料紙に再会したのである。ぐんと近づいてじっくり見ると、細い編目が見える。これは絹本、それも相当古いもので白くなっているところは折り目で、色落ちと相まって独特な風合いを醸していることが分った。まさに艶にして閑雅。一東の幹部にお聞きすると、井茂氏は以前からこれはと思える古い絹本を蒐集してきているのだと言う。おそらく作品構想と古絹本との組み合わせのイメージを重ねる楽しみがあるのだろう、それらがフィットした時、深い情感を内包した作品が生れる。作家は常に作品制作に繋がるイメージを常日ごろから持ち続けなければならないということである。
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枯野を塩に焼きしがあまりことにつくり |