池田桂鳳書展


● 12月15日〜21日
● 日本橋高島屋S.C.本館6F美術画廊

 当初は一昨年6月開催予定であったが、コロナ禍の影響で延期。昨年12月、満を持しての開催実現となった池田桂鳳6年ぶりの個展。74点が一堂になった。その中から8点をピックアップ、更に画廊ウインドーのスナップを掲載した。桂鳳の書はもちろん「かな」部門ではあるが、そんなことを考えずに素直に書の線と間合いが生みだす紙面空間のありように見入ってしまうところが大きな魅力ではなかろうか。見る側は漢字作家、かな作家、或は現代書作家などと知らぬまにレッテルを貼った見方をするものだが、こと池田桂鳳となるとそれは少し違ってくる。極端に言えば、それが漢字であろうと、かなであろうと、調和体であったとしても、その領域を越えた線の深みに目が留まり、その間合いに息を飲むのである。書を読み取るというよりも、それを感じ取る。感じさせてくれるところがこの作家の最大の持ち味であろう。
 山家集から「うれしさの…」を見るとそこには王朝仮名の雅を前面に感じさせながらも行間に通った涼しい風を感得する。新古今和歌集「まどちかき…」になると、渇筆の線条に心奪われ、季節の移り目が継墨に現れる。一方、紀貫之「わが心…」の直情的な書きぶりには、大きなうねりの曲線と強烈の長い直線があり、見る者の心はその両者のありように引きつけられている。「猫の子のくんづほぐれつ小蝶哉」可読性はもとより、溢れる情感の線性、穏やかな額マットを背にした桂鳳の真骨頂を見る。一茶の句になるとそこには明解な感情の吐露が表出され、墨はことごとく変化を極める。情趣に富んだ作品群を一望すると、書の新しい見方さえもが過ってくる。
 池田桂鳳は昭和10年京都生まれ。日比野五鳳に師事。平成16年日展で文部科学大臣賞受賞。同19 年日本藝術院賞・恩賜賞受賞。同21年から現代書道二十人展に11回出品。現在、奈良教育大学名誉教授、日展名誉会員、読売書法会顧問、日本書芸院名誉顧問など。(篠原)

 

 

まどちかき…(新古今和歌集)

 

花の山…(一茶)

一念不動なれば…(禪語)

 

画廊ウインドーから  左:芭蕉句 右:家和して万事成る

一つ松…(万葉集)

わが心…(紀貫之)

山ふかみ…(式子内親王)

猫の子の…(其角)

うれしさの…(山家集)