第31回東京水穂会書展

 

日比野 博鳳

「いにしえを…(他)」

 毎年恒例の水穂会の東京展。今回も五鳳翁、光鳳師の賛助出品のもと、理事以上の幹部役員35名と本年度選抜の50名の作品が並ぶ中、五鳳翁は実朝の歌意を感取した写実の風景そのままの筆致。光鳳師は式子内親王の歌を静かにしたためた。
 池田桂鳳顧問は空間をふっと切るような散らしで山桜を吟じた子規に沿う。博鳳会長は、良寛の歌を小字による山形の布置で、流れを柔らかく導びき格調高い雰囲気を演出した。代表理事7名はそれぞれの風趣を醸す。品格高いキリリとした線質の上林三玲だが、今回は大胆な捌きで魅せた。連綿を抑えた単字の響きの風合いを探る土岐妍子。福島有何は上下揃えで良寛の歌を。終行を半分残した絶妙空間を印で締めた。万殿紳水の放ち書きの空間処理も自風の域に。山本万里は2010年の歌会始に詠まれた歌を現代かな、漢字文として書した。飯田龍太の情緒的で人間味ある句を大らかな空間に布置した山本三千代。吉見靖子の筆先の効いた繊細な線状が魅せる心地良い2紙の響きは、秀逸だった。理事からは、やや堅さあるも変らぬ真摯な姿勢で書に向かってきた水野裕子を挙げた。選抜から博鳳氏の愛娘、日比野由佳の扇面を。今後の変化に期待したい。(松)