第40回記念日彫展より

日本芸術院会員

山本 眞輔

 

 第40回記念日彫展より、日本芸術院会員山本眞輔氏の「砂丘の記憶」を紹介する。この作品は、本来なら「心の旅シリーズ」に入るものだが、旅の中の記憶のイメージを心韻的な響きとして形象化する「記憶シリーズ」の作品とお聞きした。
 右手を広げ、風の流れを感じながら静かに目を閉じて耳に囁きかける砂の音を聞く少女の像。かすかに靡くスカートが風を演出し、心の世界に音を感じる少女の表情が何ともいえない雰囲気を醸しだしている。この作品について「敦煌の鳴砂丘の風紋の美しさと、自然の大きさ、神秘さへの感動の記憶は今も新しい。踏みしめた砂の感触と砂の鳴く音を想いだしながら、常に変貌する砂丘の姿と人間の生命の儚さが重なりあう。」との山本氏のコメントを頂いた。それで納得がいった。作者は風紋を造る砂のさらさらという音を聞いているのではなく、自ら踏みしめた砂の感触と鳴き砂の音を少女という形象を借りて、その感動の記憶イメージを追体験しているのだ。ただただ、写実形象の再現を目指すのではなく作者の原風景が浮かぶ作品といえる。
 このシルクロードへの旅は「心の旅」シリーズとして始発から終着点まで追い続けたいと聞いているが、この「記憶」シリーズの表現も加えて行きたいとのこと。また、奈良・飛鳥、斑鳩をテーマとした作品も構想中と言う。日本の歴史の流れの中に秘められた人間の悲哀、一層奥行きのあるシリーズが期待できよう。
さて、山本氏の日本芸術院会員就任記念の個展が東京日動画廊(H23.2.18〜27)と名古屋日動画廊(H23.3.3〜12)で開催される。「心の旅」、「祈り」シリーズを中心とした30〜40点。日展特選、日彫展西望賞、会員賞、内閣総理大臣賞、日本芸術院賞の受賞作に未発表作品が並ぶ。その開催が楽しみである。 (松原)


砂丘の記憶    130×72×45 石膏