第92回白日会展より
ー 心の旅シリーズー
日本藝術院会員
山本 眞輔
〈心の旅〉シリーズが続く。ヨーロッパに始まり、間にまほろばの大和を経て、今作はイタリア南部、シチリア島のシラクーサが舞台となった。
長い髪を風にふくらませる乙女の上半身像で、逆三角錐形のフォルムの中で左手を胸の前に置いている。全体が渋い金色に着色されているのは、具象作品に抽象性を企図し、あくまで心象風景の中の女性としての存在のイメージを高めているのだろう。かつ、そこに神秘性を感じるのは、胸前の手と乙女の表情と相俟ってのことだ。
「歴史背景を感じさせる土地での何気ない出会いが作品につながっていく」「一番最初のイメージが大切」と語っているが、簡潔なフォルム、いくらかの装飾性を伴った優美さ、そして力強い造形力が総合されて、生命力と精神性が凝縮された彫刻作品となっている。
「訪れた街や村、会った人たち。その折々の印象を小説家が紀行文を記すように」一人の女性像として結晶させているのだ。
氏は常々、みずからの信条として「彫刻は美しくなければならない」と言っている。癒しや感謝、強さ、怒りや悲しみ、希望も絶望までも彫刻の�T美�Uの表現の対象である。愛や祈りや命など誰でもが知ってはいても、目には見えない。この目4
に見えないものを目4 に見える「かたち」にするのが、彫刻家・山本眞輔の仕事なのだ。
氏は愛知県に生まれ、地元の高校卒業後、東京教育大学(現・筑波大学)の彫塑専攻に入学。子供のころから石ころと遊び木と戯れ粘土いじりを楽しんでいた。石と木と粘土を自然の友とし、自然の中にいろいろなかたちを見つけて喜んでいた。いつの頃からかこれらの持つ力を借りて自分の思いの丈を発信したくなった。彫塑の選択はごく自然の道であった。
振り返ってみれば、彫刻を選択し継続する力とそれを実現するための伴侶、この二つを「大きな力」から贈られたと、昨年は二人のお嬢さんと3人展も開いた。
山本氏は幸せな人である。もちろん、たゆまぬ努力と精進ゆえである。(中野)
