村田省蔵展
堅固な構成、滋味深い色彩
■9月2日〜8日
■日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
傘寿を迎え、村田省蔵展が開かれた。自選による旧作から近・新作まで40余点の展示となったが、氏が金沢美術工芸専門学校(現・金沢美大)4年在学中の日展初入選作など旧作をはじめて見ることが出来たことはうれしかった。以来、今年で60年の画業となり、新作だけでも120号2点、100号3点をはじめ80、60、50号などがたくさん並び、その旺盛な意欲にも驚かされた。
日展初入選、いわば画壇デビューの「診療室の女医さん」(50F、1949年)と新作「凛として」(120F、2009年)の2点を掲出した。この2点には60年の歳月があるのだが、その制作姿勢に少しも揺るぎのないことが見てとれる。しかもこの20年近くの日展出品作は越後地方の取材による稲架木(はさぎ)ばかりをモティフに描き続けている。この執拗さも氏の資質の一つであろう。
もちろん60年の歩みのなかにはメキシコ連作(73年)があり、富良野や美瑛に取材した北海道シリーズ(86年から)や吉野の桜や尾道風景などがあり、比較的色彩に富んだ作品も試みている。その上で結局は越後のはさぎ風景に収劔されていったようである。
では、氏の作画姿勢の一貫とは何か。骨格の確かな造形と重厚で奥深い色彩であろう。もちろん60年の間には洗練もされているし、技術的な上達も当然のことながらある。しかしそうした面に走らず、きわめてストイックな精神性を堅持しているのではないか。
構成面では柔軟性を持たせながらも堅実で、フォルムはどこまでも確かである。色彩は、北陸(金沢市出身)育ちの体質かも知れないが、曇天だからもの憂いということはなく、地味ながら滋味深く、闊達な筆致は力強く精彩を放っている。
(中野)
