第30回記念 日洋展より
ー 雪景に日本の心をー


日洋会理事長・日本藝術院会員展

塗師 祥一郎

 

 雪景色の名手である。
 1967年渡欧の折、「印象派の絵などで見ていた風景が当たり前に目の前に広がっている。憧れ続けた風景はありのままの自然の風景なんだ、とわかった途端、日本の風景を描くことが自分の宿命だ、と強く感じたと、かつて本紙の記者に語っている。
 それがちょうど雪を描き始めた頃だったことから、以来今日まで日本の雪景色にこだわって描き続けて、半世紀をこえた。
 理事長の重責を務める日洋展がことし30回展を迎えた。その図録の挨拶に「具象絵画の原点は…�T自然と
の対峙�Uである」と書いている。そのことはみずからの体験からも確信を持っている。だから高齢の今でも現場へ出かけることを怠らない。「写真じゃダメ、実際の空気が伝わらないから。自分がその風景の中にいて、その風景との会話の中で筆が動く、そのことが非常に重要だ」とも先の取材時に語っている。
 『静寂』は150号の大作である。昨秋の改組新第2回日展の出品作『山麓雪景』と川の様子など似通っているように感じるから山形での取材かも知れない。氏は新潟や生まれ故郷の石川にも多く取材しているから、確定することはできないが。
 手前から奥に向かい、雪の田でん野や を切って逆くの字形に川が流れ、川畔には丈低い雑木が立つ。画面4分の3辺りに家並が並び、そのしばらく田野の広がりが稜線を明らかにした山に続いている。メリハリの効いた、実に大胆な構成である。そして何よりも惹かれるのは、雪の無彩色の景にみられる雪の彩りの美しさである。
 手前から川へ向かう雪、その対岸の蔭る雪、右手の段丘の雪、大きな面を占める薄陽を受ける雪、屋並の向こうの雪、山の雪。これらみんな同じ雪ながら違っている。七色の雪の描き分け、しかもそれぞれの色味に微妙なニュアンスが含まれている。変へん化げ する雪を観照する眼差しと描写が、無彩色の風景を豊かにし、味わいのみならず作品そのものの深まりを生み出している。故に�T名手�Uなのである。
 雪国に生まれ、雪国を愛し、日本の風土を映し出す健筆を喜びたい。(中野)

 

静 寂(M150)