日本藝術院会員
藤森兼明展
ー清麗なる調べー
■ 4月21日〜27日
■ 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
昨年11月、藤森兼明氏の日本藝術院会員就任記念作品展が、故郷富山県の高岡大和で盛大に開催されたが、それに続く日本橋三越での一大個展。
第33回日展会員賞の「アドレーション・パンタナサ」、第36回日展内閣総理大臣賞の「アドレーション・デミトリオス」(上掲作)、第39回日展出品作で日本藝術院賞を受賞した「アドレーション・サンビターレ」など日展、光風会展の大作9点を中心として新作の人物、薔薇、数点の風景を含めた計38点が並んだ。
日展洋画で人物をモティーフにした作家は多いが、藤森の描く人物には凛とした空気の響きがある。背景の金色と精緻なデッサンの人物との呼応感が生む視覚的響きに違いないが、背景は単なる主題を活かすためのものでなく宗教的心象空間として存在させており、彼岸にたいする此岸の象徴として女性像を配しているのである。どの作品に接しても女性像からの鋭い目力を感じる。現世に生きる人間の指針をその目力に収斂させているからと思えるが、この作品は特にモナリザ的視線(どの角度から見ても見つめられている感覚)を持たせている。しかし、面白いことに女性像の視線の正面に立つと、彼女の視線は観者を通り越して彼方へと投げかけられている。横向きの女性像も何点かあるが、その視線の先は定かでない。あえて言えば自らの内面を見つめる眼差しであり、恐らく作者が女性像の目を借りて彼岸を見つめる眼差しなのであろう。
上掲の「アドレーション・デミトリオス」はゴルゴダの丘で磔となった聖衣を持ち帰った「デミトリオス」への礼拝の思いを込めた作品であろう。また、30号の「ラベンナを想う」という横に頬杖をついた女性像と、20号の「ビザンチン敬慕」もあった。ビザンチン帝国の副都であったイタリア・ラベンナの教会に現存するモザイク画のイメージを背景に敬虔なクリスチャンである作家の礼拝が続く。そうとなれば、薔薇の花は礼拝の献花と解することができる。現代様式の新宗教画と言って過言でない。
昭和10年、富山県砺波市の生れ。現在、日本藝術院会員、日展常務理事、光風会常務理事、金沢美術工芸大学客員教授。
(松原)
