第98回光風会展より
―八ケ岳山麓の錦秋を
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理事長
寺坂 公雄

 


 第98回光風会展より、寺坂公雄理事長の「やまづら紅葉」を紹介させて頂く。
 早いもので、寺坂氏が「デルフォイへの道」で日展文部科学大臣賞を受賞し、その4年後の2005年「アクロポリスへの道」で日本芸術院賞、同年日本芸術院会員に就任されて7年が経過した。2007年の就任記念の小回顧展(日本橋三越)で、新モティーフの八ヶ岳山麓風景を出品され展覧者に新鮮で瑞々しい感動を与えたが、以降、光風会、日展にシリーズとしての発表が続いている。その出品作を追ってみると、2007年6月の光風会展に、冬の澄明な光を孕んだ大気に春の芽吹きの生命を思う「冬麗山林」、同年の日展に八ケ岳晩夏の景「山麓涼風」、翌年の第94回光風会展に晩秋から初冬の白樺まじりの雑木林の存在美を静写した「峡北冬韻」、その年の第40回日展で芽吹く生命讃歌の「山麓蒼映」、そして、第95回光風会展の「山麓紅彩」で白樺の合間に映える紅葉が登場する。第41回日展では、自然破壊を憂う画家の心をつなぎ止めた1本の唐松の若木を生命感あふれる様に描いた「山路蒼風」を出品するが、第42回日展で峡北の紅葉群の鮮烈な赤の感動「紅葉山峡」を発表した。今作は3年前の「山麓紅彩」の場所を違う角度から捉えた作品のようにも見えるが、雰囲気は明らかに異る。前作は横長サイズで、左1/3に天地を貫く黒々とした木を配して林の広がりの中に奥ゆきを持たせ、1本の紅葉を際だたせた景として切り取ったが、今回はスクエアのサイズで、1本の紅葉をより擬人的に捉えている。周囲にも紅葉群が見え隠れするが、林樹の中に凛然とたつヒーローとして画家は称賛をおくっているのだ。ここでも天地を貫く1本の木を右端に配して奥の空間を広げているが、目立たせてはいない。そのヒーローに、周りの林樹が囁きかけているような大気の動きを微妙なタッチが表現している。
 八ヶ岳山麓にアトリエを構えて37年を迎えるが、「アクロポリスへの道」に代表されるようなオムニバス構成の作品を手がけている時、ふと眼にとめた大自然の美の煌めきを幾度となく胸に刻みつけていたのであろう。今、自然讃歌を謳歌する。(松)

 

 

やまづら紅葉 S100