日本藝術院会員・日展顧問
寺坂公雄の「雪景」
八ヶ岳南麓の雪化粧を描いた作品。雪景色は珍しいと思いながら、手もとの資料をめくっていると、日展出品作「山麓冬木立ち」(2017年)が目にとまった。
丈高い木々にまじって白樺や若い杉の木をぬって、白い雪のなかを人々の往来したなごりが黒々と湾曲して奥へ消えてゆく作品だった。“冬以外のシーズンでは温暖化と大陸から来る酸性雨・黄砂の影響を受け、森林の被害”を呈しているが、“雪はそれらを隠して春を待つ。零下15度の世界にも自然の摂理が”あって、そんな四季の巡りを思い、“冬木立ちに春への胎動を感じた。”とコメントしている。
いまではすっかり馴染みとなっている八ヶ岳山麓の風景作品が初めて発表されたのは、2007年、日本藝術院会員就任記念展(日本橋三越本店)であった。
ギリシャの遺跡や彫刻作品、それらをとりまく風景をモティフにオムニバス構成によって、雄大な悠久のロマンを奏で、リアリティとファンタジーを生み出す作品にまじって「八ヶ岳山麓萌える」と「樹間秋色」が発表された。
以降、この2点が八ヶ岳山麓をめぐる四季の自然美を謳い続けるシリーズの嚆矢となった。
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扨て、「白樺林 雪」である。Sサイズ(正四角形)を構成するのは雪と白樺林の白、そして奥深くまで続く森林の紅黄と緑色のモティフである。構成も彩調もシンプルにしてストイックである。が、仔細に見れば、けっして単純ではない。大きく立ちはだかる森林の左に杣道を配して奥行きに深さをつくり、白樺の幹の太細や丈の高低、樹間の間合いによってリズムをつくらせ、地面の雪に対応して白い雲を浮かべる青空をのぞかせる。
彩色においても、雪、幹、雲の白は一様ではない。ことに雪に印された陰翳は、この作品に清澄さを深め、風景に感じる内面性を孕ませていよう。
写実においても、対象の本質的要素をひきだして描写する点では多少であれ抽象化の作用が必須であることを教えられる。
作家はこれまで殆ど、風景に人物をいれない。それは自身がすでに画中人物になりきっているからであろう。(中野)
