人はどこから来て、どこへ行くのか?

―何来何去― 蔡 國 華 展

 蔡國華という作家を初めて知ったのは12年ほど前のことである。上海から来日したのは1988年のことで、彼は日本語学校で学びながら日本の公募展に出品し次々と受賞。3年後に武蔵野美術大学油絵科に入学した頃には既に知る人ぞ知るまでになっており、その頃は、ジャズの世界を彼独特の切り口で描いていたと記憶する。妙に新鮮に思えたのは日本の画家にはない空気を孕んでいたからで、今から思えばそれが彼の持つ大陸的な匂い、どっしりとした人間観察力から生まれたものであったような気がする。茶系の暗色を実に効果的に使うのもこうしたDNAによるものと思われる。
 この度、池田20世紀美術館に於て開催された蔡國華展は、これまでの氏の画業を総括するものであり、武蔵美で学んでいた頃より持ち続けている「何来何去」のテーマを具現する最大の発表の場となった。10メートルにも及ぶ大作群が何点も壁面を取り巻き、正に蔡ワールドと呼ぶにふさわしい展覧となった。
 蔡國華は人間を凝視する。喜びよりも悲哀を感じさせる作品が多いのは、それが主テーマに通づるからである。現在42歳、今後ますます期待が膨らむ。 (松)

   ■2006年9月28日〜2007年1月9日  ■財団法人 池田20世紀美術館8F   「 何来何去(部分)」 油彩・キャンバス 182×273cm×2 2005年