馬 越 陽 子 洋画展

 

―人間の河―

 

 いささか時が経過してしまったが、紹介出来ずに気になっていた個展があった。今年2月日本橋三越で拝見した馬越陽子展である。
 わたしは何故かその中の1点「献身」を忘れられなかった。黒々とした斜め下の闇と斜め上の溢れる光の狭間に立つ人物の身体を射た4本の矢、命をかけて信じた道の先頭に立つ勇気はまさに人として生きた証であると絵が語っている。本物の矢を無造作に使い、その矢を受ける人物そのものに描き手がなり切っている。ある意味狂気の世界に入らなければこうした作品は生まれないだろう。
 そうした意味に於て、馬越陽子の世界は精神的なリアリズムがある。形象の正確さを越えたところの奥に位置する世界とでも言おうか。若くしてブレイクに魅かれたというが、そのことが「人間の河」シリーズに繋がったといって過言であるまい。  (松)

   ■ 2月17日〜23日  ■ 日本橋三越本店 

  

     「人間の河 ―慈― 」 2003年 150変