―藝術無終―
文化功労者
奥谷 博
展
奥谷絵画の魅力は、多彩な強い色彩を駆使し、創意に満ちた遠近法と明暗法を、幾何学的ではあるが決して縛られることのない自在な構成で、ダイナミックにスケール感豊かに描き出すところにあろう。
そのことは、2007年パリのユネスコ本部で開かれた「世界遺産条約採択35周年記念・奥谷博―訪れた世界遺産展―」においてあまねく認識されたことでもある。その後も精力的な取材活動が展開され、アンコール遺跡を描いた大作に結実、圧倒的な迫力をもって会場正面に展示された。
『バイヨン―微笑』『バイヨン―クメールの微笑』は緑に赤褐色を基調にした対作品(200F × 2)。バイヨンはトムの中心にある寺院で、51基の四面仏塔が立ち上がる。それら仏顔に真正面から取り組み、その特徴を強調しながら独自の美意識を余さず展開している。巨大な仏顔の片隅に微笑む少女を挿入しているのは、この画家のヒューマニティの現れで、それは孫娘を描いた『七歳 ちゃまですよ』(60F)にも、鯉昇りに集うファミリーを描いた『天空に舞う』(200F)などにも見られる。虎群像の『生への叫び』(100F)にさえ、猛々しさに人間的共感を覚える。(中)
