日本芸術院会員
生の極 ―
奥 谷 博 展
東京展 ■2008年11月18日〜24日
■日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
名古屋展 ■2008年12月9日〜15日
■名古屋栄三越7階美術画廊
松山展 ■2009年2月17日〜22日
■松山三越6階特設会場
福岡展 ■2009年4月8日〜13日
■福岡三越9階三越ギャラリー
奥谷博先生の近年の意欲的、かつ精力的な制作・発表活動には瞠目すべきものがある。一昨年はパリのユネスコ本部で「世界遺産条約採択35周年記念 奥谷博展―訪ねた世界遺産」を、さらに昨年にかけて全国四つの美術館で大規模な自選回顧展を開催、加えて文化功労者に顕彰されたことは記憶に新しい。今展はその勢いのまま近・新作で構成された充実の個展であった。
会場は明晰で華やかな色彩に溢れていた。
『厳島』は世界遺産シリーズの一作で、海上から神社を眺望する構成で、鳥居の朱赤、海と屋根の群青、背後の緑との交響で、写実と装飾を融合させた傑作である。『祈りの自画像』は独立展にも出品されていたが、泡立ち渦巻く紺碧の海を背景に巨大な大仏の顔が登場し、片隅で卑小な人間が苦悩と欣求の祈りを捧げている。
何よりも見逃してならないのは、これらの作品の根底にはライフワークである〈生〉と〈死〉というテーマがあることだ。『厳島』では観光名所という俗と聖域の結界としての鳥居であり、それはおのずと〈生と死〉に還元されていく。「祈りの自画像」では広漠たる海原が彼岸と此岸の境界を暗示している。
このことを象徴的かつ端的に表現しているのが、この個展のタイトルの由縁ともなった『絶望の極』『歓喜の極』の対作品である。
かたや、渦巻く海へ垂直落下する隼(?)であり、かたや渦潮から白浪蹴立てて舞い上り垂直上昇するひとつがいの隼である。色調は絶望と歓喜を象徴する青と赤を基調にしている。何よりも驚愕するのは、そのスピード感にある。直截に有無を言わせずテーマに迫る勢いが凄い。〈生と死〉は古今東西あまたの画家が描いてきたが、それはまたそれだけ普遍的なテーマだということだが、多くは物語り的であったり情緒情感的であったりするなか、奥谷先生はみずからの思想をバックボーンとしながら、深くて重い普遍のテーマを新たな構想によって描いた、そのクールな熱情・知性が迫力をもって一気に観者に迫ってくる。
(中野)
