半世紀に旦る群鶏シリーズ―
日本芸術院会員  清 原 啓 一  展

 07年4月から5月にかけて約1ヶ月半に及ぶ一大回顧展を地元渋谷区立松濤美術館において開催された清原啓一氏。その画業の殆どが「鶏」への表現展開の歴史と言って過言でない内容で圧巻であった。出品作52点のうち「鶏」以外の作品は、画家を目指す熱情を持ち始めた昭和22年の風景画「けやき」から、石膏デッサンを本格的に始めた昭和23年の「婦人像」、そして明治大学政経学部を卒業し両親の反対を押して東京に残り、中学校教諭をしながら本格的に絵画に取り組み出した昭和27年の日展初入選作「椅子による女」ほか数点の静物、風景画が散見できたが、昭和29年の日展出品作「鶏」以降現在まで所属の光風会展、日展に於て「鶏」をテーマとして発表してきた大作群で、正に「遊鶏の賦」にふさわしい回顧展であった。
 今展はその回顧展に続く新作展。もちろん生涯のテーマである「鶏」シリーズが中心であるが、氏は1980年代の終り頃から山岳作品を描き始めている。「日本の風土感が画面で呼吸している作品にしたい」という想いを山国日本に重ねたと思われるが、今回はその象徴である「富嶽」の中作品も出品され、好きな薔薇の作品とともに「鶏」シリーズを盛り上げた。薔薇の絵は画面の四隅から絵具の彩度、明度が徐々にあがり最終的に花の中心点で輝く。まるで暗い夜空に輝く星雲を連想する作品であった。
 紹介の「紅葉の遊鶏」は、幾層にも塗り重ねられた絵の具がときに綺羅のようにスタッパリングされ、また、所々に美しい半透明のグレイズが施され、天鵞絨のような押さえられた色彩の中に雌雄の鶏達を配す。誇らしげに庭を闊歩する雄鶏、脚、鶏冠、尻尾と躊躇無く描かれた鋭い筆勢は、画面全体に緊張と流れを創り出し、そこに物語を生み出している。清原ワールドの具現である。  (松)

 東京展  ■2007年11月6日〜12日 
     ■日本橋三越本展本館  6階美術特選画廊
 名古屋展  ■2008年1月8日〜14日  
      ■名古屋栄三越7階特選画廊

    「紅葉の遊鶏」  130F