日本の風土  清原啓一展

 河口湖にアトリエを持つ清原啓一氏は、比較的近場にある清春の白樺美術館へ時々出かけられる。その途中から八ヶ岳が見える。様々な表情の八ヶ岳を折々写生していたようで、今回は甲斐の山々と、これも清春での取材と思われる桜の作品を中心にした発表となった。
 
清原啓一といえば〈鶏〉である。その連作は長い間続けられており、1959年日展特選作は『雄鶏』であり、64年の光風会50回記念展での記念会員賞も『鶏』。ずっと降って94年日展内閣総理大臣賞も『散策』で鶏。2002年に日本芸術院賞・恩賜賞、その秋に日本芸術院会員になられたが、謂わば鶏の仕事が評価されてのことと言える。
 
昨年の光風展も日展も鶏であった。紅葉の、あるいは花の咲く庭に餌をついばみながら群れ遊んでいる、動的な活気のある情景には命の喜びが溢れ、しかもその鶏がミノルカ産であれ日本産であれ、清原氏の筆致にはどこか日本の自然、風土がただよっている。
 
さて〈八ヶ岳〉である。『山間八ヶ岳』(60号)、『 (』『八ヶ岳』(共に40号)など、いずれも青々とした山岳がとらえられ、目に鮮やかな作品だが、ここでは『天空八ヶ岳』を挙げた。周囲の丘陵を低くおさえ、天に聳えたつ孤峰の雄々しさと存在感が際立つ。加えて、広くとった空がすばらしい。天空に湧き立つ雲の姿、きらめくさま。澄みきった大気の中で不動の山、輝き湧き上る雲、しかもその雄壮な中にいささかの哀愁を感ずるのは筆者の読み過ぎだろうか。だからこそこの作品に日本の自然、日本の風土を感じるのだが。
 
あらためて年譜を見ると64年にヨーロッパ、ギリシャ、エジプトを旅し東洋と西洋の気候風土からくる文化の相違を身にしみて感じる、とある。なお今展は喜寿記念でもある。          (中野)

 

    ■ 1月19日〜2月5日   ■吉井画廊 

  

      「天空八ヶ岳」